不安の残るシリア戦。あえてハリルJの「よかったこと」を探してみた (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 さらには、攻撃があまり円滑に進まず、前線の選手が孤立しがちだったことで、逆にFW大迫勇也のボールを収める能力や、キープ力といったものが、改めて際立った。また、ミランでも日本代表でもプレー機会が限られていたFW本田圭佑も、後半途中から入った右インサイドハーフが意外とハマった。先発で90分間このポジションで、とは考えにくいが、オプションの可能性をうかがわせるという意味では、興味深いテストだったと言える。

 以上のように選手個々に目を向ければ、ポジティブな点を拾い上げることは可能だろう。テストマッチとしての意味をそれなりに持つ試合ではあった。

 ただし、それはやはり、好意的に解釈するならば、だ。もう少し試合全体を俯瞰し、内容を振り返ると、非常に物足りない試合だった。残念ながら、その印象は強い。

 例えて言うなら、昨年10月のW杯最終予選、ホームでのイラク戦に近い、攻守両面で何もできない試合だった。

 現在の日本代表は、ビルドアップからの攻撃については、すでに大きな期待をしにくくなって久しい。ポゼッションが安定せず、DFラインの背後へ長いボールを蹴るだけの攻撃に頼ることもしばしばだ。

 つまり、点を取る(あるいは、フィニッシュまでつなげる)には、基本的にいい形でボールを奪ったところから、それほど手数をかけずに速く攻め切ることが必要となる。

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