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蹴球解説!アギーレのサッカーが「攻撃的」である理由 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

「堅守速攻」。手倉森監督はある記者会見でそう述べた。だが、堅守速攻の「堅守」は、当たり前の話になる。堅く守らなければ、失点の山を築くことは見えている。だが、日本ではこれを「引いて守ってカウンター」という日本語に置き換える。まさにサッカー的ではない悪い習慣がある。

 そしてアギーレのサッカーにも「堅守速攻」と言う言葉を用いる人は少なくない。これを「引いて守ってカウンター」という意味で使おうとしているなら、大きな誤りだ。ウルグアイ戦、ベネズエラ戦のサッカーを見れば一目瞭然。「引いて守ってカウンター」ではないことは、誰の目にも明らかであるはずだ。

 守備的な細貝萌を攻撃的なポジションで起用した意味は何か。後ろを固めようとするなら、守備的MFとして森重真人の脇に置いたはずだ。目的は攻撃的守備。プレッシングだ。そしてプレッシングが、守備的サッカーを象徴する作戦ではないことは、これまでに述べたとおりだ。守備的な選手を高い位置に置いてもサッカーは守備的にならない。攻撃的か否かは、起用する選手のキャラクターで決まるわけではないのだ。

 こうした誤解が生まれる理由は、日本にプレッシングの文化が根付いていないからだ。「できる限り高い位置でボールを奪い返し、相手の守備陣が整わぬうちにゴールに迫る」プレッシングサッカーも、まさに「堅守速攻」だ。

 なぜ高い位置でボールを奪おうとするのか。攻撃を長くしたいから。攻撃的サッカーを展開したいから。最大の目的はそこになる。

「堅守速攻」という言葉は、きわめてファジーなサッカー用語なのだ。書き手が最も気を配らなくてはならない点であることは言うまでもない。もっとも、アギーレの過去を少しでも知っていれば「引いて守ってカウンター」の監督ではないことは明白なのだが。

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