ふたりの漫画家がブラジルで考えた「日本らしいサッカー」とは? (2ページ目)
ヤマザキ 言語的なものもあると思うんですよね。カンツォーネじゃないけど、ラテン語系の雰囲気や調子は、日本語にうまく当てはまらないかもしれないですね。特にサッカーの実況だと。
とり・みき 僕自身は過剰な応援系の解説や実況は苦手ですね。ウィットは効かせてほしいけど。日本の実況は、侍の心でストイックにやったほうがいいと思います(笑)。
ヤマザキ イタリア人が「ティアーモ」って言っても普通だけど、日本人が「愛してるよ」っていつも言っていたら気持ち悪いだろ、っていうのと同じものを感じます。だから、日本は日本なりの実況の仕方でエンターテインメント性を漂わせていけばいいのかなと思う。ブラジルやイタリアの人たちは、あれぐらいやらないと喜ばないのでああいう実況なんだと思います。
とり・みき 南米とイタリアの実況には、違いはありますか?
ヤマザキ ちょっと違いますね。南米のほうが、ちょっと野生臭が強いです。イタリアの場合は、実況に批評的な内容も入るけど、南米の場合は「パッションで何とかなるだろう」「考え過ぎたほうが駄目だ」みたいな方向に行きます。
とり・みき ポルトガルはどうですか?
ヤマザキ イタリアとブラジルの中間ぐらいですね。でも、やっぱりヨーロッパだから、批判的な方向のほうが強いかもしれない。ブラジルなんか、「手でボールを触るぐらいの勢いはあってもいいんだよ」というほうが観衆は喜ぶ雰囲気。でも、同じヨーロッパでも、オランダやドイツはまた違うんですよ、あの人たちは。ラテンとはまた違うハングリーさ。
とり・みき 相手がどんなに弱くてへばっていても手を緩めない感じがしますからね。もうやめとけっていうぐらい(笑)。
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ヤマザキ 国民性って、サッカーのスタイルに表れますね。私はそれほどサッカーに固執して生きてきたわけではないのですが、サッカーの激しい国に住んでいたおかげで自然と見るようになったんです。
とり・みき イタリアとかポルトガルとか。
ヤマザキ 国運をサッカーに賭けているような国で暮らすと、日本のサッカーに物足りなさを感じることもあるんです。
とり・みき サッカーに国民性が表れるという話は、大前提というかサッカーの話題では基本中の基本みたいなところがあって、スポルティーバでいまさらそういう話はしたくないんですが......(笑)。
ヤマザキ いや、こっぱずかしくても、まずはとっかかりとして。
とり・みき 和を重んじる日本のサッカーは、マイナスだって言われることもあるんですよ。日本は、ミッドフィルダーにすごくいい選手がたくさんいるけど、ゴールをがむしゃらに決めるエゴイストのフォワードがいない、ということは昔からずっと言われてきた。
ヤマザキ どうしてですか?
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