2014.07.10

W杯で酒井高徳が触発された「内田篤人のプレイ」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by JMPA

 ブラジルW杯に臨んだ日本代表メンバーは23名。そのうち、GK西川周作、GK権田修一、DF伊野波雅彦、DF酒井宏樹、DF酒井高徳、FW齋藤学と、6人もの選手が出場時間ゼロに終わった。出番のない中、それぞれの選手がさまざまな思いを募らせ、いろいろな葛藤を抱いて大会を終えたが、大会を通して印象的だったのは、酒井高のスタンスだ。誰もが前向きに過ごしていたが、とりわけ彼はポジティブな姿勢を貫いていた。

精力的に練習をこなし、チームに活気を与えていた酒井高徳。「(ポジティブな理由は)前回の南アフリカW杯の経験が大きいですね。サポートメンバーとして同行したんですが、あのとき、大会直前に何人かの選手がレギュラーから外れた。でも、その選手たちが、腐ることなく、練習に取り組んでいた。先輩たちのそういう姿を見てきているんで、その経験がここに来てすごく生きていますね」

 南アフリカW杯では、大会を目前にして、それまでレギュラーだったMF中村俊輔をはじめ、FW岡崎慎司、DF内田篤人、GK楢崎正剛らが控えに甘んじることになった。酒井高は、彼らのその後の振る舞いを間近で見てきた。その姿が、酒井高の選手としてのあり方というものに、大きな影響を与えた。ブラジルW杯の大会期間中、酒井高は真摯に練習に取り組み、試合中はベンチから大きな声を出して、チームの雰囲気を盛り立てた。

「僕らは、交代選手が3人使われたら、あとはベンチで声を出してピッチの選手を応援するしかない。そこで、例えばコートジボワール戦で2点取られて逆転されたときに、ベンチにいる僕らが下を向いて『もう負けた』というムードになってはダメ。そういうときこそ、『まだまだあるぞ!』って声をかけていたし、ピッチの選手たちはそんなベンチの雰囲気を見れば、士気が高まるんじゃないかと思っていた。僕らベンチにいる選手は、ピッチでプレイしている11人の選手と同じ気持ちで戦っているので、試合終了のホイッスルが鳴るまで、ベンチでできることは精一杯やろうと思っていた」

 そうしたスタンスを崩さなかった酒井高だからか、第3戦のコロンビア戦で、最後の交代メンバーとしてMF清武弘嗣がピッチに向かったときも、「(清武を)気持ちよく送り出せた自分がいた」という。