ふたりの漫画家がブラジルで考えた「日本らしいサッカー」とは? (5ページ目)
とり・みき 飲み屋の話題で楽しく盛り上がる、ということだったらいいし、僕もするけれども、でも基本的には、どれほどもっともらしいサッカー評を書いているブロガーよりも、プロのサッカー選手やスタッフのほうが何倍もよく分かっているんですから。出来ないのは出来ない理由があるんだよね。
ヤマザキ 勝ち負けは結果論だけど、そこを目指しているときにどういうプレーを人に見せるか、ということが大事なのかもしれませんね。選手の志や気持ちの問題というか。見ていて面白いサッカーのほうがいいじゃないですか。たとえ負けても、印象に残るチームや国があるわけです。負けたのに、勝った相手より思い出してしまう国があるし、選手がいる。多くの人はたぶんそこを求めていると思うんです。もちろん勝ち負けは大事だけど。
とり・みき 最後に喜べる国はひとつしかないから、優勝した国以外は皆、泣いて帰るんです。
ヤマザキ その泣きや悔しさの中に、どんな感動を見いだすかですよね。「だけどこれだけのことをした」「あの選手はこんな良さがあった」と思えるプレーを人の心にどれだけ残せるか。サッカーには、すごくそれを感じます。理詰めに計算通りに勝とうっていう、アンドロイドみたいなプレーは面白くないですよ。南米大陸や南ヨーロッパの地中海側の人たちは、そんなこと全然考えてないわけですから。
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とり・みき いや、今はかなり考えてると思うけど(笑)。その意味で言うと、ザッケローニはまさにそういうサッカーを目指していたはずなんです。「1点取られてもいいから2点入れるんだ」という勇気を見せる、攻撃的サッカーを。
ヤマザキ ただ、ワールドカップに出てくる国は、そもそもなぜサッカーを始めたという動機からして違いますよ。テレビゲームも何もなくて、遊ぶものがボールしかない国のサッカーは、執念や粘着性が違う。日本のサッカーは、良くなっている速度も速いと思うし、南米やヨーロッパサッカーのストラテジーや技術をうまく習得しようとしていますよね。でも、それが完全に浸透して熟成するまで、まだ時間がかかるんじゃないですか?
とり・みき まだ歴史が足りないというのはもう20年くらい言われてる(笑)。ヤマザキさんは今回ほぼ初めて日本代表をちゃんと観たのだろうけど、昔と比べると、格段に良くなっていると思います。だいたいワールドカップでは、みんな警戒しながら1次リーグを戦うから、バカスカ点が入るゲームのほうが珍しい。本気の力はトーナメントに取っておきたいし、ケガもしたくないから、1次リーグでは変なことをして点を取られるよりも1-0でひとつ勝って、あとは引き分けでもいい。だから、いかに攻撃的といっても、ワールドカップは親善試合のようにはいかない。日本はこういう結果でしたが、前回のワールドカップのときよりも絶対に強くなっていると思います。観ていて選手達にがっかりするようなシーンはなかった。
ヤマザキ 試行錯誤の積み重ねだから、ある程度の時間はかかりますよね。
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