いざW杯へ。キプロス戦で見えた日本代表の好材料とは (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 内田らしからぬ自らの派手な復帰祝いとなったが、ゴール直後、日本ベンチへ一目散に走っていき、フィジカルコーチ、コンディショニングコーチと抱き合って感謝の意を示したあたりは、復帰までの道のりがいかに苦しいものであったかを物語る。

 前半45分だけの出場でベンチに下がった内田は試合後、「やっぱりお客さんが入って(試合を)やるのは違う」と話していたが、これがまさに彼の実感だろう。

 内田と入れ変わるように後半45分だけプレイしたのが、吉田と長谷部。いずれも動きを見る限り、大きな問題はなかった。

 吉田に関しては、本来の右センターバックではなく左に入ったため、攻撃の組み立ての際、窮屈そうに右足でパスを出すことが多く、右でプレイするときほどの力は発揮できていなかったが、それはコンディションとは別問題。背後へのボールの対応やカバーリングは的確で、長く実戦を離れていたことのハンディは感じられなかった。

 吉田自身、「サイドチェンジで3回ミスした」と話したように、キックの技術に優れた吉田にしては珍しくロングフィードが不安定ではあった。それでも「練習でやっていることをトライするのは、この時期しかできない」と、さほど気にする様子はない。順調にトップフォームに近づいていると見ていいだろう。

 そして、ケガから復帰した3人のなかで最もキレのある動きを見せていたのが、キャプテンの長谷部である。

 本来なら厳しいフィジカルトレーニングの反動で体が重くなるところだが、それ以上に試合に出ることへの飢えが勝っていた。そんなことを思わせる動きだった。長谷部は「相手は疲れていたので、後半のほうが押し込めた」と振り返ったが、後半、日本が前半以上に攻勢に立ったのは、ボランチの長谷部が出足よくセカンドボールを拾い、相手の背後を狙って走り込んでいたことも大きな要因のひとつだ。

 何本かあったミドルシュートのチャンスを決められれば言うことなしだったが、言い換えれば、足を止めずシュートを打てるポジションに確実に入っていたということでもある。

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