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【なでしこ】NZ戦勝利も、求められるベテランと若手のさらなる融合 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 生まれたてのチームにコンビネーションはまだ浸透していない。40分、より高い確率でゴールに結びつけるスペースを探していた宮間が見つけたのは、DF裏へ抜け出した髙瀬の先。絶妙なスルーパスを髙瀬が胸トラップでコントロールし、「自分でも驚くほど」という落ち着きを保ったまま右足で流し込んだ。ようやくの先制点だった。

 しかし、後半は選手交代などで、攻撃の流れがピタリと止まってしまう。追い打ちをかけるように雨が降り出すが、「ベトナムは雨がよく降る」と、指揮官は願ってもないシミュレーションだとニヤリ。ほとんど危険な時間を過ごすことなくここまで来た日本だったが、60分、中盤を割られ、右サイドからクロスを上げられる。DF有吉沙織がクリアするも、MFヤロップに決められ同点。悔やまれる失点だった。

 日本は86分、宮間の右CKから菅澤優衣香が飛び込んで勝ち越しゴールを挙げ、なんとか勝利を収めたものの、攻撃ではバイタルエリアで最後の一手がつなげられず、攻守にわたって課題が浮き彫りとなった。「このチームでできることの20%~30%しかできてない」と語ったのは宮間。厳しい状況にあることは選手たちも理解している。現状のメンバーの力を限界以上まで引き出すしか道はない。

 そんな中、"化ける可能性"を感じさせたのが吉良だった。試合開始直後こそ緊張が見られたが、「走ってボールにプレスかけて、自分でリズムをつくっていこうと思った」という吉良は、守備では中盤でインターセプトを見せ、攻撃ではボールを足元におさめ、ワンタッチで流し、アクセントをつける動きを見せた。

「体格やスピード、プレスの速さとかも実感できた」と本人も手応えを感じている。代表デビュー戦としては上々のパフォーマンスだったと言えるだろう。昨年の東アジア競技大会で佐々木監督の指導を受けた吉良。そのポテンシャルの高さはこの時にはすでに指揮官の中に刷り込まれていた。

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