U-17女子W杯。優勝の要因は「大胆コンバート」 (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 決勝戦、左SBとして先発した宮川も含め、日本の両サイドバックは最終的にMFが守った。ちなみに、今大会のベストメンバーといえる最終ラインを見てみても、CBの市瀬以外は全員この大会のためにコンバートされた攻撃型の選手たちだった。

 攻撃面では飛び級でU-19女子代表に招集されていた長谷川を呼び戻したことが功を奏した。皮肉にもU-20女子ワールドカップの出場権を逃したことで、長谷川のU-17世代復帰が実現したのだ。

 トップ下にはすでに杉田という看板があったが、ボランチに下げ、トップ下に長谷川を配置。攻撃に厚みを出すとともに、ラストパスの供給源を確保したのである。奇しくも前回大会(2012年アゼルバイジャン)を経験する二人がチームを牽引していくことになった。彼女らのコンビネーションから生まれるチャンスは日本の生命線となった。

「(長谷川)唯はとにかく気が利くプレイをしてくれる。何も言わなくても、きっとここに来るだろうなっていうところにボールを出してくれる人」(杉田)、「ヒナは任せられる人。自分が苦しい状況でも動き出せばボールが出てくるんです」(長谷川)と互いの信頼は厚い。

 大会を戦いながら固めていった布陣。決勝でチームは最高の仕上がりを見せるはずだった。「よく2-0っていうスコアで勝てたなと思う位、やられたなって正直思います(苦笑)」という高倉監督の本音はそのまま選手たちの本音でもある。

 セレモニーでは世界一の景色に興奮を隠せない様子だった選手たちも、取材に応える時間になると、落ち着いてきたのか、喜びの言葉のあとには引き締まった顔になり、反省点を並べ立てる。選手たちの理想の展開とはいかなったようだが、苦しい時間を耐えて、勝ちきったことは胸を張れる。決して快勝ではなかったかもしれない。それでも確かな成長の証とともに、若いなでしこたちはその名を歴史に刻んだ。

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