U-17女子W杯。優勝の要因は「大胆コンバート」 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 初戦では出来なかった鮮やかな流れからのゴールに気をよくした日本は、一気に波に乗りたいところだったが、そこはスペインが簡単にやらせるはずもない。日本以上のプレスを見せるスペインが徐々にゲームを支配しだす。

「初戦はスペインに何もやらせなかった位の出来だったんですが、スペインが修正というか成長してきた」と高倉あさこ監督も振り返ったが、スペインの強さ、上手さは日本と似かよる。そこにフィジカルが加わるのだから脅威だ。中盤で日本のパスは通らなくなってしまった。

 後半も耐える時間帯が長かったが、持ち前のプレスとカバーリングでしのいでいた78分、途中出場のFW児野楓花(藤枝順心高)が高倉監督の期待に応える会心のゴール。喉から手が出るほど欲しかった追加点がここで生まれた。いつもクールな高倉監督も、勝利を引き寄せたこのゴールには力強いガッツポーズを見せた。この1点がスペインにとって大きなダメージとなったことは言うまでもない。

 90分を戦い終え、世界一までのカウントダウンは3分。そしてついに試合終了のホイッスルが鳴り響いたその瞬間、選手たちの今大会一番の笑顔が弾けた。

 チーム力が高まった要因のひとつは高倉監督が選手起用を見直したことにある。元々このチームは守備が弱かった。なかなかフィットする人材が見つからず、怪我などが重なれば、たちまちチームは崩壊の危機に晒された。特に連戦ともなれば、疲労も溜まる。

考えに考えたあげく、「目線を変えてみた」と高倉監督。人選の洗い直しより、能力の洗い出しを行なったといえばいいだろうか。例年より半年近く前倒しで開催された今大会。新戦力を見つけ出すには時間が足りない。それよりも、今いるメンバーをポジションチェンジ等で、活性化することを選んだ。「こねくり回してる内に出来上がってきた」と指揮官は笑う。

 普段とは違うポジションで起用される選手たちも期待に応えた。日本も他国同様に大会中に確実に成長したのである。

 準決勝で左SB北川が負傷した際に切ったカードはDFではなく、FWの齋原みず稀(アンジュヴィオレ広島)であり、決勝で右SBの遠藤優(浦和レッズレディースユース)が負傷退場した際も、FWの児野を投入している。右SBにはそれまでサイドハーフを勤めていた松原が下がって、役割を十分にこなした。

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