【日本代表】齋藤学が語る五輪、そしてフル代表 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

「左サイドをドリブルして中にカットインするプレイは、学の武器ですね。分かっていても取れないから。スピードがあるし、相手をかわす間合いがいい」

 愛媛時代に前線で組んだ経験のある福田健二は、才能の迸(ほとばし)りを感じたという。

「スペインのラス・パルマスでプレイしていたとき、アドリアン・コルンガ(現在はスポルティング・ヒホン)というスペイン人アタッカーとツートップを組んでいたんですが、学は似てますね。サイドを迫力のあるドリブルで崩して得点を狙える。でも、アドリアンよりも取り組む姿勢が真面目だし、伸びしろはもっとあるはず。日本代表には間違いなく入ると思うし、どんどん上を目指して欲しい」

 2011年シーズン、齋藤は愛媛FCで14得点を記録。J2ながら、実戦で同じ数字を叩きだしている選手は同世代では例外的で、一躍ロンドン五輪のメンバー候補に名前が挙がった。同年8月には、招集されたことのなかった五輪のアジア予選メンバーに入り、マレーシア戦に出場した。愛媛のメッシは、わずか数ヵ月の間に「日本のメッシ」になろうとしていたのである。

「実はオリンピックはマリノスにいたときの方が意識していました。『オリンピックに出たいから移籍する』というコメントもしたほど。でも、愛媛でプレイするようになったら、プレイそのものに夢中。愛媛のことが大好きになって、このチームを勝たせたい、という一心でした。だから記者の人に、オリンピックについて聞かれても『考えていません』と答えたし、それは本心でした」

 齋藤はシャツの襟を正しながら続ける。

「でも、大会前にトゥーロン国際ユーストーナメントのメンバーに選ばれ、エジプトを相手にしてなにもできずに負けて悔しくて。真剣にオリンピックを意識するようになりました。それまでは選ばれても“お客さん”の気分だったけど。宇佐美とか海外組の選手と一緒にプレイしたのも刺激になったのかもしれません。球際の強さとか、いろいろな部分で海外組は違い、世界に行きたい気持ちが高まりました」

 齋藤は滑り込みでロンドン五輪出場メンバー、18人の精鋭の一人に選ばれている。本番では交代の切り札として、仕事をやり遂げた。
(つづく)

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