モンペリエで戦う鮫島彩と宇津木瑠美、
それぞれの成長と葛藤 (2ページ目)
フランスリーグ2年目の今シーズン、チーム内での自らのポジションを確立した宇津木
昨シーズンは、初めての海外移籍後、日本と異なるフランスのサッカーに戸惑いもあった。それが、1年間の試行錯誤を経た今シーズン、彼女には何かが動き出す予感があった。もちろん、昨年のワールドカップも少なからず影響している。
これまでの自分と、その殻を破ろうとフランスで努力した1年のバランスを取って融合させる場は、「ワールドカップしかない」と思っていた。そしてその融合がうまくいったからこそ、今モンペリエで宇津木は確固たるイメージを持ってゲームに臨むことができ、またチームメイトも彼女を認めている。
一方、自分の新たなプレイと可能性を模索している真っ最中なのが鮫島だ。なでしこジャパンでもモンペリエでも左サイドバックの鮫島だが、カバーリングの概念がほとんどないフランスのサッカーで、鮫島がオーバーラップを狙うにはやはりタイミングが難しい。しかし、この日の1点目のアシストは鮫島の積極性の賜物。「指示は出ていなかったけど、やったもん勝ちでしょ(笑)?」という言葉に逞しさを感じた。
「でも、ひとつできただけ」と本人も言うように、格下相手に後半は展開が単調になり、鮫島はチャンスを生みだすことができなかった。また、鮫島のパスミスからカウンターを喰らうシーンもあり、反省しきり。「味方を生かして、自分も生かしてもらえるプレイをしたい」というテーマへの取り組みは、まだ始まったばかりだ。
ふたりに共通しているのが「言葉が通じなければプレイで示す」こと。自己主張が激しく、考えを前面に出すチームメイトたちだが、結果を出している者の意見には、それが多少気に入らなくても耳を傾ける。だからこそ、ふたりは結果で自らの考えを示し続けなければならない。
これを障害と捉えるか、自らを鍛える好機と捉えるかで、成長の度合いは変わる。幸運にも、宇津木と鮫島はポジションが近い。ふたりで自分たちの意図するサッカーを続け、それに呼応する選手が出てくれば、もともと身体能力の高い選手が揃っているだけに、モンペリエの左サイドにいい化学変化が生じる可能性は大いにある。
カギを握るのは鮫島。先にこの地で戦い抜く"コツ"を掴んだ宇津木に続いて、突破口を見つけることができれば、モンペリエがさらに上昇する起爆剤になるかもしれない。そんな期待を抱かせてくれる一戦だった。
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