【日本シリーズ】「石井大智は悪くない」ソフトバンクにあって阪神になかった「日本一を見据えた組織マネジメント」 (3ページ目)
石井以外に信頼できる投手を育て上げてこなかったことが、その証左と言える。日本シリーズがウィークデーに3連戦で行なわれることは周知の事実だ。そのなかで、点差を広げられたくない場面で起用できる投手の選択肢が、実質的にひとりに限られてしまうというのは、組織マネジメント上の大きな欠陥と言わざるをえない。
【最後まで解決できなかった課題】
それは石井の起用だけに限らない。負けたら終わりの第5戦のベンチに、勝てば次戦の先発予定だった投手が入っているというのは、常識的にはあり得ない。仮にも、セ・リーグを圧倒的な強さで制したチームである。そこには、もう少し綿密なマネジメントが必要だったのではないか。
打線においても、1番から5番までとそれ以降の打者との間に大きな力の差があった。その課題を日本シリーズまでに解決しきれなかったことも、最後まで響いた。
ペナントレースでは、どのチームも優勝を目指す。しかし、それは目先のリーグ制覇にとどまるものではない。その先にあるクライマックスシリーズ、日本シリーズ制覇を見据え、そこを勝ちきるだけの戦力を整えてこそ、本当の意味での「優勝」と言える。日本一を前提に、通過点としてリーグ優勝しなければ、真の強いチームとは言えない。
藤川球児監督はシリーズ後の会見で「ソフトバンクは非常に強かったです。とにかくチーム力を上げなければいけない。それくらいに強かった」と、戦力差を口にしている。
しかし、今回の結果を分けたのは、単なる戦力の差というよりも、日本一を見据えたマネジメントの違いだったのではないか。
昨年のソフトバンクには、そのマネジメントが欠けていた。だが今季は、一時は最下位まで低迷する時期もありながら、小久保裕紀監督がチームを巧みに立て直し、日本シリーズを勝ちきれる集団へと育て上げた。
どんな勝ち方を目指すのか。その勝ち方を実現するために、どのようなマネジメントを施していくのか。阪神には、その明確なビジョンが乏しかったと言えるのではないだろうか。
獅子奮迅の活躍を見せた石井が、その責任を一身に背負うかのように、第5戦の試合後に涙を流した。石井は悪くない。問題は、彼を"必ず勝てるシチュエーション"で投入できなかったことだ。それこそが、阪神の敗因だった。
著者プロフィール
氏原英明 (うじはら・ひであき)
1977年生まれ。大学を卒業後に地方新聞社勤務を経て2003年に独立。高校野球からプロ野球メジャーリーグまでを取材。取材した選手の成長を追い、日本の育成について考察。著書に『甲子園という病』(新潮新書)『アスリートたちの限界突破』(青志社)がある。音声アプリVoicyのパーソナリティ(https://voicy.jp/channel/2266/657968)をつとめ、パ・リーグ応援マガジン『PLジャーナル限界突パ』(https://www7.targma.jp/genkaitoppa/)を発行している
フォトギャラリーを見る
3 / 3





















































