【日本シリーズ】「石井大智は悪くない」ソフトバンクにあって阪神になかった「日本一を見据えた組織マネジメント」 (2ページ目)
【ビハインドの場面での登板】
第2戦を1対10の大差で落としたあと、甲子園での3連戦はすべて1点差の惜敗だった。先制しながら逆転された試合もあれば、先行を許してそのまま逃げきられた試合もある。そのなかで、常に責任を背負ってきた投手のひとりが石井だったという事実は、やはり見逃してはならない。
第3戦は、6回表に逆転を許したあと、先発の才木から及川雅貴、岩崎優へとつなぎ、なんとか相手の追加点を防いだ。1点ビハインドのまま迎えた9回、マウンドに上がったのは石井だった。
第4戦では、髙橋遥人が打球を受けるアクシデントもあり5回途中2失点で降板。畠世周がその後のピンチをしのぎ、つづく桐敷拓馬が6回表にダメ押しの3点目を許した。しかし、8回裏に佐藤輝明の適時打などで2点を返すと、この試合も1点ビハインドの9回、マウンドには再び石井の姿があった。
これ以上、点差を広げられたくない場面で、信頼のおける投手を投入したいという気持ちは理解できる。しかし、日本シリーズは3敗までが許される短期決戦だ。そのなかで、どんな局面でも同じ投手を起用しつづけていては、本来、最も活躍してほしい場面で、ベストな状態のまま送り出すことは難しくなるのではないだろうか。
「勝ち継投」や「勝利の方程式」という言葉があるのは、確実に勝利が約束されたかのようなシチュエーションが存在するからだ。ただし、それが成り立つのは、一人ひとりの投手がベストのパフォーマンスを発揮してこそである。
もちろん、勝利の方程式の一角として登板したこの日の石井がベストピッチではなかったとか、柳田に起死回生の同点弾を浴びたボールが失投だったと言っているわけではない。石井自身も「ベストを尽くせたと思っていますし、(体調に)課題があるとは思っていません」と語っている。
ただ、送り出す側の環境づくりという点で、「必ず勝てる」という勝利の方程式を前提にしながらも、はたして選手がベストの状態で臨める環境を整えられていたのか──。その点においては、疑問の残る采配だった。
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