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【日本シリーズ】山川穂高、甲子園で放った価値ある一発 つかんだ「新しい感覚」がソフトバンクに勢いをもたらす (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 そして決着の4球目。阪神の捕手・坂本誠志郎は再び内角寄りに体を動かしてミットを構えたものの、マウンドの高橋遥人が投じたストレートは逆球となり真ん中やや外目へいってしまったのだ。山川はその失投をとらえ、バックスクリーンへ運んだ。打ったのはたしかに甘い球だ。それでも内角攻めという伏線を蹴散らしての一発だったからこそ、余計に価値がある。

 一体どんな待ち方をしていたのか、試合後に山川はこう明かした。

「(高橋の)球が強かったのでそれに合わせていた。結果的に真っすぐをしっかり打ちにいけました。内角攻めが来る想定とかは、あんまり意識してなかったです。もともと配球をガッツリ読んで打つタイプでもないですし」

 ここまでのシリーズ4試合、9打数4安打で打率.444、3本塁打、7打点、5四球、長打率1.556、出塁率.643。とてつもない数字が並ぶ。ただ粗探しではないが、凡退した5打席を見てみると、三ゴロを除けば4三振を喫しているのだ。

 まさにホームランか、三振か。

【三振って誰も覚えてないんで】

 ソフトバンクの選手たちは「レギュラシーズンとポストシーズンは違う」と一様に声を揃える。レギュラシーズンの場合は、チームの勝ちが最優先なのは間違いないものの、個人成績に目を向ける部分も少なからずあるという。しかし、ポストシーズンは「個人成績は関係ない」ときっぱり。自分の数字を追わない思考によって、凡退しても気持ちの切り替えがしやすくなるというのだ。

 山川もそれに同調する。

「割り切ってますね。今日(第4戦)も最後の打席は三振しましたけど、うまいこと待てばフォアボールをとることができたと思うんです」

 7回表、二死走者なしの打席だ。桐敷拓馬が投じた5球はチャートを見れば初球の高め直球を除いて、残り4球はすべて低めボールゾーンへの変化球だった。

「でも、甘い球が来たらホームランを打てるような待ち方をしていた。もしスライダーが浮いてきたら、ストレートが甘いところに来たら、バーンって持っていけるような。それがいいところに来たんで三振してしまいましたけど」

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