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【プロ野球】数字では測れない選手の魅力を追い続けた47年 元広島の名スカウトが語る人を見抜く力の源泉 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

【カープ流スカウト戦略】

── 広島には「スカウトの神様」の異名をとった木庭教氏がいました。スカウトとしての指導を受けたのですか。

苑田 ほとんど教えてもらいませんでした。スカウトを一から教えてもらったら、逆に仕事の覚えがよくなかったと思います。「あの地域に行け」という指令だけされました。プロ野球選手の準備はチームのマネージャーがほとんどやってくれますので、列車の切符を買うことすらできない選手が多いものです。

── 広島スカウトの特徴として「オーナーも含めて、みんなで獲った。活躍できなくてもみんなの責任」と聞いています。

苑田 そういうシステムですね。いいこともそうでないことも、「スカウト全員で」と。それに、たとえば新人を3人獲ったら、現役3人をやめさせるということですから、常にチームの状況は頭に入れています。

── 広島のスカウト戦略として、投手は「即戦力の大学・社会人」、野手は「高校出を育てる」というイメージがありますが、実際はいかがですか。

苑田 一概にそうとも言えません。ただ、その年の補強ポイントが明確だったら、それ以外のポジションでかなりいい選手がいたとしても獲りにいかないのが特徴です。「ほかのチームに行かれたら困るので獲る」ということはしません。スカウトとしては、比較的やりやすいと思います。

── いわゆる「その年の一番いい選手を獲る」という戦略ではないのですね。

苑田 ただし、たとえば先発投手がほしい時、その投手にリリーフの適性があるのかどうかは判断します。あと、三塁手がほしい時、外野手だけど三塁を守れるかどうかは見極めます。だから大学時代に外野を守っていた小早川毅彦や町田公二郎は、内野をできるのかどうかよく見ていました。

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