【プロ野球】金本知憲、黒田博樹、菊池涼介たちを見出した男・苑田聡彦のスカウト人生47年の真実 (3ページ目)
【オーナーに直電して「絶対に獲ります」と宣言】
── ほかにも88年5位の江藤智選手、91年4位の金本知憲選手、07年の高校生ドラフト3位の丸佳浩選手など、下位選手や高卒選手が大成したのは苑田さんの慧眼です。
苑田 カネ(金本)の時は、東北福祉大の伊藤義博監督(当時)の前で松田オーナーに電話して「絶対に獲ります」と宣言しました。とにかくリストが柔らかくて強かった。丸は千葉経済大付高時代、投手で甲子園に出場していますが、松本吉啓監督(当時)には「懐が深いから、打者として大成すると思う」と伝えていました。カネも丸も江藤も、ほかの球団は来ていなくて、いわば"一本釣り"でした。
── 江藤選手はドラフト5位ですね。
苑田 関東高(現・聖徳学園)時代は捕手で、肩を痛めていました。ただバッティングがすばらしく、インサイドアウトの軌道でボールをバットに乗せ、リストを返さず押し出すようにしてセンターに打つ。その打球の伸びがすごくて、絶対に獲りたいと思っていました。肩も治ったのですが、問題がありまして。
── どうしたのですか?
苑田 その2年前、同校の選手がある球団に指名すると言われながら、約束を反故にされたんです。当時ドラフトは11月だったので、進学も就職も間に合わなかったようで......。そんなこともあって、疑心暗鬼になっていたんです。それで私は、学校長に向けて誓約書を書きました。
── 金本選手は通算2539安打、江藤選手は本塁打王2回、丸選手は2度MVPに輝きました。
苑田 みんなFAで移籍しました。下位で指名した選手が大成して、他球団から高く評価されるというのはスカウト冥利に尽きますね。ドラフト当日は、彼らが指名するまで無事に残っているのか、汗びっしょりになって待っていました(笑)。
【菊池涼介と小園海斗の共通点】
── 現在の広島内野陣は好選手がたくさんいます。二塁手として10年連続ゴールデングラブ賞の菊池涼介選手は、どのような評価だったのですか。
苑田 菊池は、打者がバットに当たった瞬間の一歩目が滑らかで早い。だから、あんなに守備範囲が広いんです。派手なプレースタイルに見えますが、実際は常に打球の正面に入って両手で捕ろうとする堅実な選手なんです。大学時代は遊撃手で、送球がシュート回転していましたが、セカンドにコンバートされたのがよかったですね。
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