【プロ野球】金本知憲、黒田博樹、菊池涼介たちを見出した男・苑田聡彦のスカウト人生47年の真実 (2ページ目)
── ユニフォームを脱いで、すぐスカウトになる心境はどうでしたか。
苑田 気持ちはすぐ切り替わりました。ただ九州の人間が初めての広島で結婚し、九州弁と広島弁の合わさった者が、右も左もわからない東京で生きていくことが心配でした。なにしろ、当初は気軽に話せる友人がひとりもいなかったんですから。
【歩く姿がカッコよかった黒田博樹】
── 1978年から2024年まで47年間のスカウト人生で、思い出深い選手は誰ですか。
苑田 獲ってきた選手はみんなかわいいですよ。
── 黒田博樹投手はいかがでしたか。
苑田 黒田は、上宮高(大阪)時代はエースだった西浦克拓(のちに日本ハム)の陰に隠れ、まったくの無名でした。田中秀昌監督(当時)の推薦で専修大に入学したようです。
── 黒田投手は、3年まで2部で8勝5敗、4年になると大学生初の150キロをマークし、1部で6勝4敗の成績を残しました。
苑田 最初に見た時から、雰囲気がありました。専大の野球部グラウンドは高台にあるのですが、その道中にある100メートルほどの坂道を歩く姿がカッコよかったんです。キャッチボールの投げ方もいい。その姿にひと目惚れしました。バランスがいいんでしょうね。野球部のマネージャーに「彼は誰?」と尋ねると、「黒田です」と教えてくれました。
── それはベテランスカウトの苑田さんの経験値における"感覚"なのでしょうが、それ以外の具体的な要素は何でしょうか。
苑田 たとえば、内角のストレートを打たれると、次の打席は外角の変化球を投げたりするものなんです。でも黒田はもう一度、内角のストレートを放ります。そういう"負けん気の強さ"も重要な要素です。黒田は「スカウトが無名時代からずっと見続けてくれたから、広島を逆指名した」と言ってくれました。
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