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緒方孝市が分析する広島の急失速 昨シーズンの終盤と成績は似ているが「内容は違う」 (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

――9月11日の巨人戦での逆転負けが悪い流れを加速させてしまった?

緒方 あの負けでリーグ優勝が遠のき、モチベーションや集中力の維持が難しくなったのか、精彩を欠いたプレーが目立つようになりました。目標を見失ってしまうと、そこから立て直していくことは難しくなります。

 一方、今年7月の場合は「投打がかみ合っていない」ということ。得点力不足という部分は昨季と共通していますが、今季は新外国人選手のサンドロ・ファビアンとエレウリス・モンテロがいて機能していますし、特にファビアンは、チーム唯一の二2ケタ本塁打をマークするなど期待どおりの活躍を見せてくれています。昨季は開幕早々にふたりの新外国人選手が離脱してしまったことを考えれば、戦力的には充実しています。ケガ人も少ないですしね。

 投げるほうでは先ほどお話ししたように、先発3本柱の床田、森下、大瀬良が防御率2点台を維持していてもなかなか勝てない。つまり、投打の歯車がかみ合っていないというのが現状でしょうね。逆にいえば、歯車がかみ合えば勝機を見出せるのでは? というのが今の状態だと思います。

――ちなみに、今季はビジターで大きく負け越してしまっています(15勝31敗2分け)。

緒方 興味深い現象ですよね。広島だけでなく、DeNAや巨人、中日もホームで勝ち越して、ビジターでは大きく負け越しています。ただ、面白いのが阪神で、ホームよりもビジターで大きく勝ち越しているんです(ホームでは28勝20敗1分け、ビジターでは31勝17敗1分け)。

 毎年、優勝するチームはホームでの勝率が非常に高い傾向がありますが、今季の阪神はビジターで非常に強いですね。優勝争いやAクラス争いをしていくうえで、ビジターで最低でも5割をキープしていくことが大事です。

 そういう意味で、ビジターで弱いということは気になりますし、大きな課題でしょうね。リーグ優勝を狙うには厳しい状況ですが、Aクラス入りのチャンスはありますし、目標を見失ってはいけません。ここから巻き返していってほしいですね。

(後編:広島の巻き返しポイント 若手野手たちには厳しいゲキ「必死にやるだけでは一軍の場合はダメ」>>)

【プロフィール】

緒方孝市(おがた・こういち)

1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。1986年に広島東洋カープからドラフト3位で指名され入団。2008年まで主に外野手として活躍し、盗塁王のタイトルを3度、ゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後、コーチとして後進の指導。2015年に監督に就任すると、2016年から18年にかけてチームを球団史上初の三連覇に導いた。2019年に退任後、野球評論家などで活躍中。

著者プロフィール

  • 浜田哲男

    浜田哲男 (はまだ・てつお)

    千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。

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