高山郁夫が語る若き日のライデル・マルティネス 「ひょろひょろ体型にぎこちない投球フォーム、球種は2種類だけ...」 (2ページ目)
【チームに息づく落合イズム】
── 2年間の中日コーチ時代で、とくに印象に残っている選手はいますか?
高山 一番印象深いのは、ライデル・マルティネスです。
── 2017年に19歳で来日。1年目は育成選手契約でした。
高山 キューバ代表の選手だと聞きましたが、中日に入団した当時はひょろひょろの体型でした。投球フォームもぎこちなくて、投げられる球種はストレートとチェンジアップだけ。森さんが「このピッチャーは化けるかも?」と発掘して契約したのですが、最初はあまりにも粗削りで「え?」と戸惑ってしまいました。
── マルティネスに対して、どんな育成をしたのでしょうか。
高山 試合後はいつも小笠原孝コーチ(現ソフトバンク二軍コーチ)がつきっきりで、必ずドリルをやっていました。ノックを受けたり、踏み台に足を乗せて投球フォームを修正したり。ドリルが終わらないと帰してもらえないので、マルティネスは泣きべそをかきながらやっていましたね。
── そんな時期があったのですね。
高山 キューバではそんな練習をしたことがなかったでしょうし、最初はカルチャーショックも大きかったはずです。「途中でキューバに帰ってしまわないかな?」と心配しましたが、彼もよく頑張っていました。かわいげもあって、みんなから愛される子でしたね。小笠原コーチも妥協せずに、辛抱強く付き合っていました。
── マルティネス投手は来日2年目の2018年には支配下登録され、2019年からはリリーフで一軍に定着しています。
高山 よくぞここまでの投手に成長したなと感じます。本人の努力、小笠原コーチのサポートも大きかったでしょうし、何よりも「数年かけてこの投手を育てていくぞ」という森さんの先見の明には驚かされました。
── 中日でのコーチ生活で、ほかに感じるところはあったでしょうか。
高山 長生きする投手が多い印象でした。ベテランの岩瀬仁紀がファームで調整していても、若手がやるような練習メニューを率先して取り組んでいました。「これがチームに息づく落合イズムなのかな」と感じました。
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