杉山一樹は「最も打てない変化球」と評される今井達也のスライダーをなぜマスターしようとしたのか (2ページ目)
【スライダーとフォークの相乗効果】
日本の投手が海外で高く評価される理由のひとつは、縦に落ちる変化球を巧みに操ることだ。杉山は国際試合でこうしたボールの有効性を感じられただろうか。
「フォークはゾーンに投げるのと、空振りをとるのと2種類あります。今日はスライダーを試したかったので、それが大きかったです」
スライダーが縦に落ちる軌道を描くことで、フォークをより有効に使うことができる。そう実証したのが、7回の先頭打者で迎えたレイパトリック・ディダーの打席だった。
杉山は「先頭打者にもスライダーを投げた」と話しており、おそらく初球からストレートを2球続けたあと、縦に落として振らせたのがスライダーだ。1ボール2ストライクからフォークが2球続けて外れると、フルカウントから再びフォークを選択。それまでの2球とは、軌道の異なるフォークをど真ん中に投げて見逃し三振に仕留めた。
「最後のフォークはストライクに投げました。フルカウントからど真ん中のフォークはたぶん待ってないので......」
そう言った杉山を見上げると、自信が満ちあふれているように映った。
じつは2019年オフ、筆者は中南米のプエルトリコで杉山を取材する機会があった。期待の大型右腕は飛躍のきっかけをつかむべく、当地のウインターリーグに派遣されていたのだ。
ラテンの大男たちに体格的にも引けを取らない杉山は強いストレート、鋭く落ちるフォークで好投を見せながら、どこか自信なさげな様子だった。当時は、投球フォームを模索中だったことが影響していたのかもしれない。
それが6年を経て、威風堂々とマウンドに上がり、受け答えでもそう感じられた。では、今回の経験を今後やWBCに向けてどう生かしていきたいだろうか。
「特にやることは変わりません。今年、自分としては防御率を低くするという目標がひとつあります。そこを低くしながら、しっかり投げていきたいと思います」
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