元プロもポテンシャルに太鼓判! 高校野球未経験、支援学校出身の18歳が独立リーガーに 「勇気を与えられる選手になりたい」 (3ページ目)
【指先の感覚がない】
昨夏のリーガ・サマーキャンプでは12日間、周囲の選手たちと共同生活を問題なく送ったが、士別では拠点を置いて生活していく。球団独特の環境が「ウィズ・キャリア」だ。チームの練習が行なわれるのは15時から17時で、その前にはシーズン中でも仕事をする。菅原代表が社長を務めるイトイグループホールディングスで、建設、介護、飲食などの業務にあたるのだ。
NPBのドラフトに即戦力や有望株を送り出している四国アインランドリーグPlusやBCリーグと比べ、創設4年目の北海道フロンティアリーグはレベル的に劣る。7割以上の選手が本州から野球を続ける機会を求めてくるなか、「地域の担い手」や「移住定住者の促進」をいかに増やしていけるか。それらがリーグのミッションだ。
当初、工藤は働きながら野球をすることに難色を示したという。彼には独自の事情があるからだ。
「身体的に指先の感覚がないんです。士別でのインターン中にもあったけれど、土木の仕事で縁石を運んでいる時、指をはさんだことに気づかず流血していました。結局、野球は指先でリリースするじゃないですか。土木の仕事は楽しかったけれど、ケガして野球をできなくなったら怖いという気持ちのほうが強くて......」
昨夏のリーガ・サマーキャンプでは不利を感じさせないプレーを見せたが、小学生の頃は苦労したと振り返る。指先の感覚がないために送球のコントロールをうまくできず、リリースポイントもつかめなかったというのだ。中学入学のタイミングで動画を撮影して研究し、徐々にコントロールできるようになったと明かす。
ちなみに、工藤はこの事実を周囲の選手に言っていない。「そこを言い訳にしたら、やっていけないという気持ちがあるから」だ。もちろん、士別のマネジャーには伝えたうえで、独立リーガーとしてチャレンジする。
仕事の配属はこれから決まるが、菅原代表によれば、2日半の建設業のインターンでは「ハキハキしていて、社員の反応もすこぶるよかった」。入団1年目の選手たちは入寮するルールで、一緒に働きながら野球をプレーする。
3 / 4