プレミア12で世界一達成の台湾はなぜWBC予選で大苦戦したのか? 知られざる台湾球界の実情 (3ページ目)
そして古久保監督も部下の心労を思いやって、WBCQについてこう締めた。
「とにかく勝ってくれてよかった。プレミアで優勝したのに、WBC本戦に出場できないとなると、せっかくの野球人気もしぼんでしまいます。とにかくWBCQに出場した選手たちは、少し休んでもらいます。体はもちろんですが、精神的にも相当疲れているでしょうから」
【代表チームのツープラトン制】
それにしてもなぜ「世界一」メンバーたちは、WBC本戦への切符をつかみにいく大一番に馳せ参じなかったのだろう。
台湾ナンバーワンと言われる名ショート・江坤宇も、今回のWBCQに参加しなかった。球団スタッフにその理由を尋ねると、「プレミア12に出たかった」という極めてシンプルな答えが返ってきた。
要するに、昨年のプレミア12に出場した選手が今回のWBCQに出場しないことは、あらかじめ決まっていたのだ。唯一の例外として、今や台湾球界の顔となった陳傑憲がプレミア12に引き続いてキャプテンとして選出された。
この代表メンバーの大幅な入れ替えの背景には、台湾の野球界の戦略がある。台湾では、国内トッププロを国際大会に送り込むのが一般的だったが、選手の負担軽減や育成を目的として「ツープラトン制」を導入。
昨年のプレミア12に出場した選手はWBCQには参加せず、若手中心の新チームが編成された。その結果、総当たり戦では3位に終わる苦戦を強いられた。
また、世界の野球水準が向上していることも影響している。たとえば、南アフリカは初戦で優勝したニカラグアをあと一歩まで追い詰めるなど、「格下」と見られていたチームも侮れない実力を持つようになってきた。
今回の台湾の苦戦は、侍ジャパンにとっても他人事ではない。
著者プロフィール
阿佐 智 (あさ・さとし)
これまで190カ国を訪ね歩き、22カ国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆。国内野球についても、プロから独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌、ウェブサイトに寄稿している。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。
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