プレミア12で世界一達成の台湾はなぜWBC予選で大苦戦したのか? 知られざる台湾球界の実情 (2ページ目)
実際にそのようなことになれば、野球賭博によって離れたファンをやっと引き戻しつつあったCPBL(台湾プロ野球リーグ)の人気回復に水を差すだけでなく、代表監督やコミッショナーの責任問題に発展していた可能性もある。
日本の野球ファンのなかには、「プレミア12で侍ジャパンを破って優勝した台湾が、なぜ予選で苦戦したのか?」と疑問を抱いた人も多いだろう。しかし今回の代表チームは、プレミア12の時とはまったく別のチームだったのだ。実際、プレミア12のメンバーで今回も選出されたのは、主将の陳傑憲ひとりだけだった。
この決断を下したのは、表向きは曽監督ということになっているが、本戦出場を逃していれば、今後の指導者人生にも大きく影響を及ぼしたことだろう。
【想定外だったWBCQでの苦戦】
曽監督は代表チームを任されているとともに、CPBLの楽天モンキーズのヘッドコーチも務めている。2020年から4シーズン監督を務めていたが、23年シーズンが終わると当時ヘッドコーチだった古久保健二がその座に就き、自身は二軍監督に配置転換されている。
そして現在は古久保監督のもとで一軍ヘッドコーチを務めている。一軍監督を解任されたうえ、その後釜に座った人間の部下になるという人事を受け入れたことからも、温厚で忍耐強い人物像であることがうかがえる。
「試合になれば熱いんですけどね」
そう語るのは、現在、楽天モンキーズで投手コーチを務める川岸強だ。
「彼とは歳が同じなんです。もう大会中は見ていられなかったですね。とにかく勝ってよかった」
そのセリフからは、盟友の凱旋を喜ぶというより安堵感が勝っていた。
楽天モンキーズの古久保監督にも話を聞くと、開口一番こう言った。
「誰もあんなこと(プレーオフ)になるとは思っていませんでしたからね」
そして今回のメンバー選定について、実際のところ誰が決めているのかわからないと前置きし、こう話してくれた。
「じつはプレミアの前から言われていたんですけど......別チームでも勝てると読んでいたんじゃないですか」
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