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「打撃だけならプロでも通用する」 カリビアンシリーズで日本の4番を務めた現役営業マンの正体 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 2023年に西武でプレーし、プエルトリコ代表「インディオス・デ・マヤゲス」の一塁手として出場したデビッド・マキノンも称える打撃だった。

「ライトの頭上を超えたスリーベースはいい一打だったね。本当にすばらしいスイング軌道で、彼のバッティングには感心したよ」

 チーム打率.200に終わったジャパンブリーズのなかで、広角に打てる佐藤の打撃技術はひときわ光っていた。その裏には、ラミレス監督のアドバイスもあったという。

「ラミちゃんにバッティングを教えてもらって、今までとグリップの握り方が変わりました。よく日本人は『傘を持つように』と言われるけど、ラミちゃんは両指の第二関節を合わせるような持ち方で、『メジャーリーガーのいい選手はこう打つ』と教わったら、スムーズにボールまでバットを出せる感覚がわかりました」

 プエルトリコ戦で右中間に放った三塁打は、現役時代ならスタンドインしていたはずだと言う。当時から体重が約10キロ落ち、打球が飛ばなくなったからだ。

 それでも、ほとんど実戦練習せずにカリビアンシリーズでラテンの一流選手たちと遜色ない打撃をできるのだから、野球を続ければいいのにと思わずにはいられなかった。

 率直な感想を伝えると、佐藤は笑顔でかぶりを振った。

「NPBのスカウトにも『打撃だけならプロで通用する』と言われていたけど、結局、自信がなかったんですよね。父から『プロに入るのはたぶんできるけど、一軍で活躍できる自信や実力がなければ入ってはいけない』と言われていました。自分が相当苦労したからだと思います。父の周りの人たちが毎年退団になっていたように、厳しい世界です。長期的に見たら社会人野球に行って、毎年いい給料をもらったほうがいいのかなと思いました」

【いつか中南米で仕事をできるように】

 もともと野球は立教大学でやめるつもりだった。パイロットになろうと就職活動していた頃、ホンダ野球部への入社が決まった高校時代の友人から「竜彦、一緒にやろうよ」と誘われ、「勝手に運命を感じた」という。

 現役引退後、カリビアンシリーズにも赤い糸で結ばれているかのように導かれた。

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