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「打撃だけならプロでも通用する」 カリビアンシリーズで日本の4番を務めた現役営業マンの正体

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 メキシコのメヒカリで開催された第67回カリビアンシリーズは現地時間(以下同)2月7日、ドミニカ共和国代表として出場した「レオネス・デル・エスコーヒード」の優勝で幕を閉じた。

 ドミニカのロビンソン・カノ(元マリナーズなど)やジョニー・クエト(元ジャイアンツなど)という元メジャーリーガーや、メキシコのジャフェット・アマダー(元楽天など)やベネズエラのエドウィン・エスコバー(元DeNAなど)という元NPB組たちも出場したなか、大会で異色の存在だったのが日本から特別招待された「ジャパンブリーズ」の4番打者・佐藤竜彦だ。

ジャパンブリーズの4番を務めた佐藤竜彦 photo by Nakajima Daisukeジャパンブリーズの4番を務めた佐藤竜彦 photo by Nakajima Daisukeこの記事に関連する写真を見る

【現役を引退し社業に専念】

「僕は正直、この大会に参加している皆さんとは目的が違っていて。現役はもう一度引退しているんです」

 熱心なドラフトファンや社会人野球ウォッチャーなら、佐藤の名前を聞いたことがあるかもしれない。ホンダが2020年に都市対抗野球で優勝した時の主力打者で、「打撃だけならNPBで通用する」と言われてきたからだ。

 現在30歳の佐藤は2023年限りでユニフォームを脱ぎ、社業に専念することに決めた。

「都市対抗で日本一を獲って、社会人日本代表でもずっと4番を打っていたので、もう高みがなくなってしまったからです。面白くなくなってしまって......。だから野球は早めにやめて、自分がやりたいことをやれるためにビジネスマンとしてのスキルを身につけたいと自ら引退しました」

 ホンダの営業マンとして働く佐藤は今回、有給休暇を取ってカリビアンシリーズに参加した。社会人野球を代表する元スラッガーが、世界的大会に導かれる道は運命的だった。

「カリビアンシリーズに出るから、長距離打者を探している。ぜひ来てくれ」

 2024年7月、フィリピンのマニラへ恵まれない子どもたちに野球を教えに行った際、同じ目的で来ていたジャパンブリーズのアレックス・ラミレス監督(元DeNA)からそう誘われたのだ。

 じつは、佐藤とラミレスは以前から面識があった。父の真一は1996年から2005年までヤクルトでプレーし、ラミレスとチームメイトだったからだ。

「お久しぶりです。でも僕、もう引退したんですよ」

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