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古川遼のソフトバンク入団辞退に見る育成制度の功罪 アマチュア指導者、スカウトたちが語る本音 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

【育成→支配下への確率の低さ】

 高校野球の監督の話に戻そう。指導者という立場で選手たちの進路に関わる者としては、"育成制度"には思うところがあるという。

「ソフトバンクで千賀(滉大)投手、甲斐(拓也)選手、周東(佑京)選手、大関(友久)投手など、育成から支配下に上がって成長した選手が何人か出ていますけど、確率的に高いわけじゃありません。メディアがそういう成功者をクローズアップするから、子ども(選手)たちは『オレだって!』って奮い立つのかもしれないですけど、確率の低さを考えたら、指導者の立場としては積極的に推すことはできませんよ。でも、最後はファミリーマター(家族で決める問題)ですからね、進路というのは」

 指導者といえども、進路についてはアドバイザーでしかなりえない。

「育成ドラフトでも実力的に支配下と差のない選手しか指名しないと、球団によってははっきり言ってくれるところがあります。実力差がありすぎると、結局、太刀打ちできないですから。そういう球団は、育成ドラフトでもせいぜい2、3人でサッと切り上げていますよね」

 プロ側のモラルとして、そういう球団は信用できるという。

「だからこちら側(アマチュア側)としても、『指名されたら入ります』という約束を調査書に意味としてこめるのが、こちら側のモラルと考えています」

 ソフトバンクの入団を回避した古川の談話に、ちょっと気になるところがあった。

「大学に進学して、4年後にドラフト1位で指名される投手になれるように頑張ります」

 この時期、よく耳にする決意表明だが、ほんとにそれでいいのか。ある大学のベテラン監督が、以前このようなことを言っていた。

「大学の監督なんて勝手なものでしてね、入ってきた選手のことをほんとに期待して見ているのは、せいぜい2年生まで。控えのまま3年生に上がっちゃうと、下に2学年いるわけで......どうしてもそっちのほうがフレッシュに見えて、色褪せて見えてしまう。だから選手たちには、できれば2年の秋までにひと勝負してほしいんです。もちろん、選手にはそんなこと言えませんけど」

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