自称・三流の五十嵐英樹が発奮した権藤監督からのひと言 大魔神につなぐ中継ぎとして日本一に貢献 (2ページ目)
現役時代は登板過多の影響で短命に終わった権藤。それだけに考慮された起用法だったのか。五十嵐自身、特に権藤からシステムに関する説明は受けなかったそうだが、手術歴のある投手に配慮した可能性はあるという。いずれにせよ、ローテーションによって中継ぎが安定したことで、佐々木の1イニング限定の抑えが実現したと言えそうだ。
「佐々木さんはフォークボールがすごいって言われてましたけど、じつはめちゃくちゃコントロールよくて。原点のアウトローの真っすぐはいつでも放れるピッチャー。もちろんフォークも武器としてすごいんですけど、奥底にある原点の能力はもっとすごい。僕はそこまですごくなくて、自分のスキルは三流ぐらいなので、『三流を一流にするには?』って考えていたわけです」
【打たれたら酒を飲んで気分転換】
マウンド上では闘争心をむき出しにし、三振を奪えば雄叫びを上げ、右腕でガッツポーズを繰り返した五十嵐。一球投げるごとに捕手との距離を縮め、まさに相手バッターに向かっていった。そして、絶対的な抑えの佐々木が『大魔神』と呼ばれたなか、口髭がトレードマークの五十嵐には『ヒゲ魔神』と愛称がついた。それも荒々しい姿があってのことではなかろうか。
「ヒゲを生やしたのも、僕は気が小さくて、性格的に弱いんで。だから仮面ライダーじゃないですけど、マウンドに上がる時に変身するんですよ。要はキャラを変えて、激しいパフォーマンスにして、バッターに威圧感を与える。困ったらバッターの目を見て投げることもあって、少しでもストライクゾーンを広く使えるように。三流を一流にするために、そんなこともやっていました」
ヒゲで強面にし、あえて自身のキャラクターを変えて、セットアッパーというポジションをつかんだ。だが、それでも打たれる時はある。切り替えはどうしていたのか。
「すぐに切り替えができないんで、当時はまず酒を飲んで気分転換、ストレス発散ですね。権藤さんは『やられたらやり返せ』って言う方ですけど、すぐにやり返したいかどうか、気持ち的には半々でした。失敗して、自分の心の中にフィルターがかかったような状態になったら、パッとフィルター取って、いつもどおりの形に戻したい。だから早く投げて、という思いはあるんです。
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