大谷翔平「伝説の本当のスタート」2016年を栗山英樹が振り返る「漫画に出てくるような選手」 (3ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

【大谷翔平を世界に認めさせる】

──日本シリーズの初戦に登板した大谷は11三振を奪ったものの、6回までに3失点。3打数2安打を放ちながらも広島東洋カープに1対5で敗れた。第2戦も1対5で敗戦(大谷は代打出場で三振)。しかし、ファイターズの本拠地・札幌ドームに戻ってから反撃が始まった。延長までもつれた第3戦、10回裏に大谷がサヨナラヒットを放ち、1勝目を挙げた。第4戦、第5戦ともにファイターズが逆転勝ち。敵地に乗り込んだ第6戦を10対4で制し、日本一に上り詰めた。

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 敵地で2連敗しましたが、本拠地に戻って3連勝。もし第7戦までもつれれば、黒田博樹投手と翔平との対決になるはずでした。「最後は野球の神様が決める」と思った時に、私の気持ちがものすごく落ち着いたことを覚えています。2連敗から3連勝したことで、野球界の先輩方に対してや、ファンに対する責任も果たせたのかもしれないと思えたからです。ファイターズが第6戦に勝利したことで黒田対大谷は実現しませんでしたが、私にとっては最高のシーズンでした。

 当時、この逆転劇を『北の国から2016〜伝説 誰も諦めなかった〜』というフレーズで表わしましたが、これはテレビドラマ『北の国から』の脚本家である倉本聰さんに「使わせてもらっていいですか」と連絡し、ご快諾いただいたものです。

"伝説"という言葉には、私の「大谷翔平を世界に認めさせる」という思いもありました。あの年は伝説をつくりたかったのです。翔平のポテンシャルは誰もが認めていたと思いますが、「本当に勝てるピッチャー」なんだということを証明したかった。165キロを投げるだけじゃない。チームのために勝利を積み重ねることができる選手なんだと。

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