大谷翔平「伝説の本当のスタート」2016年を栗山英樹が振り返る「漫画に出てくるような選手」 (2ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

 6月から15連勝をしたことも含めて、すばらしいシーズンだったと思います。7月3日に先頭打者としてホームランを打ち、投手としても8勝目を挙げましたが、翔平は周りが驚くような活躍をサラッとできる。"大谷翔平劇場"と言えるほどです。日本プロ野球最高の165キロをマークしたり、投手で先頭打者本塁打を打ったり、いろいろなことが起こりました。

 毎日のようにドラマが起こっていました。ベンチにいる私たちも「マジか?」と思えることが続きました。

 最後にホークスに3連勝しなければ追いつけない、という試合で、翔平は「ホームラン打ってきます」と言って打席に立ち、本当に打って勝つわけです。「大谷翔平が本気になると何かが起こる」ということを証明し始めた試合だったと思います。

『ドカベン』や『野球狂の詩』などを描かれた漫画家の水島新司先生にお会いした時、「僕は水島漫画に憧れて、こういう選手をつくりたいと思っていました」とお話しました。大谷翔平という、まさに漫画に出てくるような選手が出現したことを、水島先生も喜んでくださいました。

ホークスに追いつこうと毎日戦いながら、試合後にホークスとほかのチームとの結果を見て大声で盛り上がったり、残念がったり。チームが一体となって戦うことができて、ものすごく楽しいシーズンでした。状況があまりわからないまま進んだ監督1年目と違って、地に足をつけながら優勝を目指して戦うことができました。

 シーズンを1位で終え、クライマックスシリーズファイナルでホークスを下しました。第5戦の最終回のマウンドに上がったのが翔平でした。

 あの強いホークスに勝つために最終戦で投げさせようと翔平を残しておいたのですが、試合の終盤、ふと翔平を見ると、「俺、行きますよ」と言っているように見えました。監督として、行ってほしい気持ちがあるからかそう見えたのかもしれませんが、コーチに本人の意思を確認してもらったら、翔平の答えはやはり「もちろん、行きます」と。それでさっそく、ブルペンで投球練習を始めさせたんです。

 彼の野球勘というのか、場を読む力は本当にすごいんですよ。最後に165キロのストレートで相手をねじ伏せ、ファイターズは日本シリーズ進出を決めました。

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