【巨人の新星】浅野翔吾は何番を打たせるべきか? 名コーチ・伊勢孝夫は「将来のビジョンが重要」と断言 (3ページ目)
なぜ私が打順にこだわるのか、そこにはちゃんとした理由がある。それはバッターを育成していくうえで、「どのようなタイプに育てていくべきか」という方針が必要だからだ。それを決めたうえで、いま持っている技術、特徴などを認識し、首脳陣で共有する必要がある。育成するなかで、一番わかりやすいのが打順だ。私なら「この選手は将来、何番を打つ選手に育てたいですか」と監督に尋ねる。
以前、原辰徳監督が指揮を執っていた時、ある若いバッターを二軍に落としたら、違うフォームになっていたというエピソードがあった。「いったい、コーチは何を考えているのか?」と原監督は呆れたらしい。これは一軍、二軍でコミュニケーションが取れていない典型的なパターンだが、なにより「どのようなバッターに育てるか」という共通認識がなかったことが、一番の問題である。
【問われる球団のビジョン】
話を浅野に戻すが、まず将来的に何番を打たせたいかというビジョンはあるのかどうかだ。もし2番を打たせたいのであれば、逆方向へのバッティングは絶対必要である。だが、今の浅野にその技術はまだない。少なくとも逆方向に打てる技術を身につけてから、2番を打たせるべきだった。
だから、現状の6番、7番あたりはちょうどいいと思う。もし私が浅野を預かるとしたら、6番を提案する。そして、4打席に1回いい打球を打てばいいというように、伸び伸び打席に立たせたい。
浅野の長所は、先程も言ったが、柔らかさがあることだ。それに真ん中から内側のボールに対する反応もすばらしい。その点では、長距離打者タイプの資質を持っているとも言えるが、現状では中距離タイプと言えよう。あとは何度も言うが、外角のスライダー系のボールへの対応。これを身につければ、プロの世界でメシが食える選手になるはずだ。
プロ2年目の19歳とはいえ、プロの世界は厳しい。甲子園を沸かせた選手でもプロの壁にぶち当たり、苦労している間に次々と新しい戦力が入ってくる。そのうち結果を残せないとなると、いつからか話題の中心から外れてしまう。
そうならないためにも、今のうちからしっかり鍛えておかなければならない。とくに外角球への対応は、1日や2日で習得できるものではない。秋のキャンプでじっくりバットを振り、初めて糸口が見えてくるほどの大変な作業だ。しかし、浅野ならコーチにしがみつき、やり切るだろう。来春のキャンプで、様変わりした浅野に期待したい。
著者プロフィール
木村公一 (きむらこういち)
獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。
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