ベイスターズ投手陣を再生させた入来祐作の教え 「理想があっても、できもしないことを追い求めさせない」 (5ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

 入来コーチにとって"野球"とは何か?

「うーん、難しいですけど、やっぱり日々の生活や人生だったりするんでしょうね。僕は、野球がある環境にずっといたいなって思うんですよ。どんな仕事であっても。だからバッティングピッチャーをやっている時も用具係の時も、変な話、ライブで毎日、野球が見られるじゃないですか。それはそれで『いいな』って思う瞬間がたくさんあったんです。打撃練習で僕のボールをいい感じで打っていた打者が活躍してくれたり、用具係の時は『入来さん、ユニフォーム破れました』と言ってきた選手に新しいのを出してあげて、そいつが滑り込んでセーフになったりするとうれしかったんです。

 自分で言うのも何ですけど、『ホント野球好っきやなぁ』って。今はコーチという立場ですけど、自分が関わった選手が活躍をしたりすると、選手本人はもちろん、たくさんのファンの人たちが喜んでもらえるのがすごくうれしいんですよ。プロ野球に携わることができたのが、僕の人生においての一番大きな価値だと思っていますし、だからこそ誰よりも一生懸命やりたいんです」

 カロリー高く、泥臭いけど、必要不可欠なマインド。非現実を生きるプロ野球の世界で、入来コーチが今後どんな選手を育てていくのか、楽しみにしたい。


入来祐作(いりき・ゆうさく)/1972年8月13日、宮崎県出身。PL学園、亜細亜大、本田技研を経て、96年ドラフト1位で巨人に入団。97年にチーム最多の57試合に登板するなど、1年目から活躍。2001年は先発としてキャリアハイとなる13勝をマーク。03年オフ、トレードで日本ハムに移籍。06年にはメジャーを目指し渡米するも叶わず、07年10月に横浜のテストを受け合格。08年に中継ぎ要員として開幕一軍を果たすも、公式戦は3試合だけの登板に終わり、オフに戦力外を受け現役を引退。引退後はDeNAの打撃投手、用具係など裏方としてチームを支え、15年にソフトバンクの三軍コーチに就任。その後はソフトバンクの二軍コーチ、振興部などを務め、21年にオリックスの投手コーチ就任。今シーズン10年ぶりにDeNAに復帰し、二軍チーフ投手コーチとして選手の指導にあたっている

著者プロフィール

  • 石塚 隆

    石塚 隆 (いしづか・たかし)

    1972年、神奈川県出身。フリーランスライター。プロ野球などのスポーツを中心に、社会モノやサブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆。web Sportiva/週刊プレイボーイ/週刊ベースボール/集英社オンライン/文春野球/AERA dot./REAL SPORTS/etc...。現在Number Webにて横浜DeNAベイスターズコラム『ハマ街ダイアリー』連載中。趣味はサーフィン&トレイルランニング。鎌倉市在住

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