中日・高橋宏斗&阪神・才木浩人はなぜ急成長を遂げたのか? 与田剛が徹底解説 (3ページ目)
昨年の才木は、まだそういったピッチングをしてしまうところがあったのですが、今年は違います。自分のボールに自信を持てるようになったこともあると思うのですが、コースを狙いすぎない。迷いなく腕を振れているから、ボールに勢いがある。だから少々コースが甘くなってもファウルになったり、空振りをとれる。
そしてふたりの共通点として思うことは、「感知する能力」です。たとえば、シーズンを通してのコンディショニング。長いイニングを投げても、球威、フォームは変わらない。先発投手の調整は人ぞれぞれですが、間違いなく最重要ポイントになるのが疲労対策です。とくに夏場となると、80球程度でも翌日、体が重く感じる時があります。おそらく高橋も才木も、今のピッチングを見る限り、自分の体を感知する能力みたいなものが高まっているんじゃないでしょうか。
今季、非の打ちどころのない成績を残しているふたりですが、ではこれからも同じような投球ができるかといえば、「はい」とは断言できません。投げるボール自体はそれほど変わらないでしょうが、相手も研究してきます。ともにフォークを武器としていますが、対戦回数が増えれば相手も慣れてきますし、これまで空振りだったのがファウルになり、ファウルだったものがインフィールドに飛ぶようになる。それを想定してどんなピッチングをしていくのか、すごく興味があります。
今のふたりを見ていると、自分自身に満足している様子はないですし、まだまだ伸びていきそうな予感がします。どこまで成長するのか、今は楽しみしかありません。
与田剛(よだ・つよし)/1965年12月4日、千葉県君津市出身。木更津総合高から亜細亜大、NTT東京を経て、89年のドラフトで中日から1位指名を受け入団。1年目から150キロを超える剛速球を武器に31セーブを挙げ、新人王と最優秀救援投手賞に輝く。96年6月にトレードでロッテに移籍し、直後にメジャーリーグ2Aのメンフィスチックスに野球留学。97年オフにロッテを自由契約となり、日本ハムにテスト入団。99年10月、1620日ぶりに一軍のマウンドに立ったが、オフに自由契約。2000年、野村克也監督のもと阪神にテスト入団するも、同年秋に現役を引退。引退後は解説者として活躍する傍ら、09年、13年はWBC日本代表コーチを務めた。16年に楽天の一軍投手コーチに就任し、19年から3年間、中日の監督を務めた
著者プロフィール
木村公一 (きむらこういち)
獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。
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