中日・高橋宏斗&阪神・才木浩人はなぜ急成長を遂げたのか? 与田剛が徹底解説 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 今季、高橋はなかなか手応えをつかめず、開幕はファームで迎えました。しかし、心が折れることなく、じっくりフォーム修正に取り組んだことが、ようやく実を結びました。「大変」という言葉は、「大きく変わる」と書きますが、大きく変わる時ってしんどい思いをしなければ得られないものなんですよね。

ここまでチームトップの9勝をマークしている阪神・才木浩人 photo by Sankei Visualここまでチームトップの9勝をマークしている阪神・才木浩人 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【才木浩人に感じるエースの自覚】

 才木に関しても、「意識の変化」のようなものを感じます。今季はエースの青柳晃洋を筆頭に、昨シーズン新人王とMVPに輝いた村上頌樹や実績ある西勇輝ら、ことごとく阪神投手陣は苦しんでいます。

 そうした状況のなか、才木は自分の立ち位置がどこなのか、考えたのだと思うんです。直接、彼と話したわけではないので明言はできませんが、たとえば「オレがやらなきゃ」「ここがチャンス」といったものを感じたのかもしれません。そうした気概のようなものを、彼のピッチングから感じます。

 そんな才木の成長したポイントを挙げると、ランナーを出してから慌てなくなったことです。牽制であり、間(ま)の取り方を見るだけで、「まったく慌てていない。落ち着いているな」と感じさせるようになりました。

 そして大胆さ。たとえば走者二、三塁のピンチの場面でも、怯むことなく2球で追い込んでみたり、ストライクゾーンで勝負できるようになりました。言い方を変えれば、少々コースが甘かろうが堂々と投げ込めるようになりました。

 そうした才木の姿を見ていると、"自覚"のようなものを感じます。ゲームのなかで勝負どころを理解し、「ここで抑えたら流れがくる」とか「今日は少しでも長いイニングを投げよう」とか、ただ投げるだけでなく俯瞰して見られるようになった。そうした成長のあとを感じます。

 これは一般論ですが、打たれる投手、実績のとぼしい投手って、傾向があるんです。それは投げる前から自分を追い込んでしまうこと。相手が強打者や苦手な打者だと、どうしても慎重になりすぎて、カウントを悪くしてしまう。その結果、ボールを置きにいって打たれてしまう。

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