ロッテが独立リーグの外国人選手・マーティンを育成で獲得した理由 BC茨城GMが語る舞台裏 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

【BC茨城で施されたスーパースター教育】

 そんな大器に、色川GMは「スーパースター教育」を施してきた。

 たとえば6月1日、群馬ダイヤモンドペガサス戦だ。0対4とリードされた8回表無死満塁で回ってきた4番マーティンは、レフトに犠牲フライを放った。打線が全体的に苦しんでいたなか、"最低限"の仕事を果たした格好と言える。

「点を取れるところで取らないといけない。逆に言えば、必要のない失点は1点でも少なくしていかないといけない」

 アストロプラネッツでは日頃からそのように伝えているが、上記の試合後、色川GMはマーティンを個別に呼び出した。

「君はスーパースターになるという未来が決まっている選手だ。8回に犠牲フライを打った場面で、『今日のヒーローはオレだ』と本気で思っていなかったよね? 犠牲フライで1点をとれてよかったというような雰囲気になっていたけど、僕が君に求めるのはスーパースターになるためのプロセスだ。満塁ホームランを打てば同点の場面なんだから、目の前の1点を取りにいくのではなく、スーパースターなら一気に決めにいってほしい」

 日本的な野球の価値観では、0対4で負けていても「まずは1点返そう」と考えがちで、その結果を出せればよしとしてしまうことも少なくない。

 だが主軸候補や、"助っ人"として来日する外国人打者にはもっと求めたほうがいい。色川GMは未来あるマーティンとの対話を通じ、あらためてそう考えるようになった。

「外国人とはいえ、『郷に入っては郷に従え』と言われるように組織の考え方、やり方に流されてしまうものです。そこは同じ人間ですからね。うちは外国的な発想の球団ですが、海外で野球をやっていた人からすると、1プレーをすごく細かく意識しています。でも、群馬戦のあとで話をしたときに、ハッとしているマーティンを見て、『外国人選手が日本で育たない難しさは、こういうこところにあるんだろうな』って感じました」

 NPBには多くの外国人選手が育成契約で入団するようになったが、そこから支配下登録されるのはごくわずかだ。もちろん育成から支配下に上がる確率の低さは大前提だが、外国人選手を伸ばすには野球にとどまらず、文化や環境の違いも考慮しなければならない。本当の意味でそう理解している日本人指導者は、ごく少数に限られるだろう。

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