伊勢孝夫が岡田彰布監督の采配に喝 「もっと選手を信頼し、気持ちよく送り出してやるべきだ」 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 ルーキーイヤーの昨年、森下はシーズン中盤から中軸を任され、日本シリーズでもまずまずの働きを見せた。そりゃ相手チームとすれば、躍起になって封じ込めにかかる。

 それを克服するための準備は秋の練習なのだが、最後まで戦ったことも影響して、その時間がなかった。課題を掘り起こし、春季キャンプまでにどうやってクリアするかテーマを立てて練習する。そうしたプロセスを積み上げて、はじめて2年目の好結果がもたらされるのだが、それができなかった。だから監督が直接指導したところで、劇的に変わることはないのだ。

 では、岡田監督がすべきことは何か? まずは去年に立ち返ること。要するに、「選手を信じること」だと私は思う。

 もう少しすれば梅雨が明け、勝負の夏場がやってくる。当然、自慢の投手陣もへばってくるだろうし、その時に打線がどこまでカバーできるかどうかだが、活発化する保証はどこにもない。

 だからこそ選手を信じ、我慢し、ベンチから送り出してやる必要があるのではないか。近本光司にしても、あれだけの好打者が2割5分を切っているのは、4番に据えた影響が出たのではないか。サトテルの起用法にしてもしかりだ。

 なのに、そうした采配についてマスコミは指摘しない。とくに関西のマスコミは球団、そして岡田監督に睨まれるのを恐れてなのか、厳しいことは書かない。批判と誹謗中傷は違う。書くべきこと、伝えるべきことはしっかり伝えるべきではないか。

 ここに来て、去年に近いオーダーになりつつある。問題は、これをどこまで我慢できるかだ。無論、調子を落としている選手が多く、すぐに活発化するとは思わない。しかし、去年あれだけ頑張った選手たちなのだ。その選手たちを信用してやれなくてどうする。

 それでダメなら仕方がない。おそらくファンは納得するだろうし、なにより選手たちが意気に感じるはずだ。そうした関係性こそが、シーズンを通して戦うプロ野球には重要なのだ。

 球団初の連覇を目指すには、選手を信じて、もう一度チームをひとつにすること。それ以外にないと、私は思う。


伊勢孝夫(いせ・たかお)/1944年12月18日、兵庫県出身。62年に近鉄に入団し、77年にヤクルトに移籍。現役時代は勝負強い打者として活躍。80年に現役を引退し、その後はおもに打撃コーチとしてヤクルト、広島、巨人、近鉄などで活躍。ヤクルトコーチ時代は、野村克也監督のもと3度のリーグ優勝、2度の日本一を経験した。16年からは野球評論家、大阪観光大野球部のアドバイザーとして活躍している

著者プロフィール

  • 木村公一

    木村公一 (きむらこういち)

    獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る