パ・リーグで「打てるキャッチャー」が急増中 高木豊から見た好調の要因は? (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Kyodo News

【今季の森が苦しんでいる理由】

―― 一方で、今季のオリックスの森友哉選手のバッティングをどう見ていますか? 5月26日の西武戦で今季第1号が出るなど、ここ最近の状態は上向きですが、まだ本来の力を発揮できているとは言いがたいです。

高木 昨季と比べて、技術的に変わった部分があるとは感じはしません。ただ、起用法でプレーのリズムが取りにくい部分があると思うんです。キャッチャーをやったり、外野を守ったり、DHを任されたり......。各ポジションにはそれぞれのリズムがありますし、いろいろなポジションで試合に出るから落ち着かないんじゃないですか。毎試合マスクを被っているほうが、いいリズムや緊張感を保てるのかもしれません。

 なぜそう思うかといえば、僕は大洋(現DeNA)時代に内野を守っていましたが、現役晩年に移籍した日本ハムでは外野を守ったんです。「こんなところまで本当にボールが飛んでくるのかな」というぐらい遠く感じたものです。何が言いたいかといえば、野球選手は"距離感"なんです。キャッチャーはバッターに一番近いわけじゃないですか。最前線で仕事をしているというか、そのぐらいの緊張感があるわけです。

――外野はキャッチャーに比べると、あまり緊張感がない?

高木 私が感じたことですし、少々大げさな言い方かもしれませんが、野球に参加していないような感じなんです。ましてや、DHの場合は守りつかずに打席に入る。緊張感を保つのは本当に大変なんですけど、キャッチャーや外野、DHなどで出場している森にとってはなおさら大変でしょうね。

 昨季は、外野を守ることに不慣れだったこともあって緊張感を保っていたと思いますが、ある程度慣れてきた今季はそういった緊張感もないはず。そういったことがバッティングにも影響しているんじゃないかと。

 ただ、ここ何試合かは状態が上向きなので、あとは低迷している長打率(.335。昨季は.508)も上がっていくといいですね。オリックスは厳しい戦いが続いていますが、巻き返していくために森の復調は欠かせません。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

■元プロ野球選手のYouTuberのパイオニア

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