松永浩美が明かす「福本豊、引退騒動」の真相 上田利治監督の「去る山田、そして福本」に何を思ったのか (2ページ目)
【突然の引退の真相】
――ちなみに福本さんは、現役生活20年で大きな足の故障をしていないですよね。
松永 大きな故障はないかもしれませんが、足も含め、どこかしらは多少の故障をしていますよ。福本さんに限らないことで、どの選手もごまかしながら試合に出ているものです。
――福本さんは現役を引退して何年か後、「体力的にあと3年はやれた」とおっしゃっていますが、松永さんはどう見ていましたか?
松永 やれたとは思いますが、福本さんの引退に関してはいろいろありましたからね。突然の球団身売りの発表があり、阪急として迎える西宮球場でのラストゲーム(1988年10月23日)を終えた後、あの上田利治監督のスピーチがあって......。
――同試合を最後に山田久志さんが現役を引退することは知られていましたが、そのスピーチで上田監督は、福本さんも引退すると取れるような内容を話しましたね。
松永 いきなり上田監督から「去る山田、そして福本」なんて言われたら本人は驚きますよ。福本さんは、上田さんから「(現役を引退して)コーチ専任でやってくれないか?」と言われていたのですが、現役を続けたかった福本さんは「コーチ兼任ではダメですか?」と返答していた。そのやりとりは続いていて、阪急最後の試合の時にも「決着していない」と思っていたようです。
――上田監督のなかでは、コーチ専任でやってもらう意識があったんでしょうか。
松永 言い間違いという話もありますが、突然スピーチで出たもんだから、福本さんも「えっ?」となったわけです。試合が終わってグラウンドにみんなが集まっていた時、私は「おかしい」と思っていました。
引退が決まっていた山田さんが胴上げされたんですが、その後に上田監督が「フク(福本氏の愛称)も胴上げしてやってくれ」と言ったんです。周囲からしたら、「なぜ、福本さんを胴上げするんだろう?」となりますよね。
――実際に福本さんは胴上げをされていましたが、どんな様子でしたか?
松永 その場の勢いで胴上げが始まっちゃったんですが、表情はまったく見えませんでした。胴上げしている選手たちも「なぜ?」となったかもしれませんが、「阪急の最後だから(チームの顔である)福本さん、山田さんを胴上げするのかな」と思っていたかもしれません。
――その時のことについて、福本さんと話をしたことはありますか?
松永 その数日後、おそらく東京で試合があったあとだったと思うんですが、大阪に戻る新幹線で福本さんと席が隣になったことがあって。私が「いったいどういうことなんですか?」と聞いて、「実はこうで......」と2時間ぐらい話したのかな......。
私が「福本さんを胴上げするとなった時、阪急として最後だから胴上げするんだと思ったんです」と言ったら、「違うんよ」と。福本さんも「ちょっと話が違うじゃないか」とは思っていて、「まったく心の整理がつかなかった」と話していましたね。さらに「結局、引退するんですか?」と突っ込んで聞いたんですが、「もう受けるしかないやろ。言われたんやから」という感じでした。
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