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「まるで詰め将棋」自信家の新谷博が唯一「この人には勝てない」と絶賛した投手がいた (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── その郭泰源さんは94年、95年と開幕投手を務めています。

新谷 僕は結構な自信家なんですけど、「この人には勝てない」と思ったのは郭泰源さんだけですね。もちろん、西武にはほかにもすばらしい投手がたくさんいましたが、郭泰源さんは別格でした。コントロールよし、キレよし、スピードよし。細身の体で、思いきり投げていないのにあの球ですから。それに頭もよかった。打者が外角のスライダーを狙っていると思えば、インコースにズバッとストレートを投げ込む。1球1球に意図があって、最後は打者が「参りました」という、まるで"詰め将棋"のような投球でした。もう絶対に敵わない。私の理想です。

── ほかにすごいと思った投手はいましたか。

新谷 ソフトバンクの斉藤和巳ですね。190センチの長身から150キロを超すストレートとフォークを投げ下ろす。2006年に日本ハムとのプレーオフでサヨナラ負けを喫した時の姿は、今も記憶に残っています。いつだったか、私が解説の仕事をしていて、試合のあと本人に直接「ほんとにいいピッチャーだよな」って言ったことがあるぐらいです。郭泰源さんはクール、斉藤和巳は気迫。両極端のエースでしたね。

【プロで活躍できるか否かはメンタル】

── 西武のあと、2000年から2年間は日本ハムで過ごしました。

新谷 あの郭泰源さんは50歳まで投げると思っていましたが、96年にファーム落ちすると「投げるのが怖い」と、97年を最後に35歳で引退しました。その気持ちがよく理解できました。私もファーム暮らしが長くなり、その頃は一軍で打たれるのが怖かったですね。薄々限界というのは気づいているのですが、現実を突きつけられるのが怖かった。

── 投手にとって"気持ち"が大切であると、あらためてわかります。

新谷 プロに入ってくる選手の技術は、大差ないと思います。違うのはメンタルの強さ。振り返れば、私も大学時代のメンタルの弱さを社会人時代に克服して、プロでも勝つことができました。ただ、プロ入りしてからの5年間でタイトルを獲り、2ケタ勝利も挙げ、開幕投手も経験し、オールスターにも出場した。そこで気持ちが途切れてしまったのかもしれません。

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