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巨人・松井颯「凡人でもやればできると証明したい」高校時代は控え投手「育成の星」の挑戦 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【Bチームの星になりたい】

 5月21日、松井は東京ドームのまっさらなマウンドに立った。高校3年夏に甲子園球場で1イニングを投げた経験はあるが、プロ野球の先発マウンドは別世界だった。

「大学時代に投げたいい球場といえば、平塚(バッティングパレス相石スタジアムひらつか)か浦安(浦安市運動公園野球場)くらいかなぁ。東京ドームは屋内の球場なので、やっぱり景色が全然違うなと感じました」

 それでも、オープン戦で東京ドームを経験していたこともあり、「意外と緊張せずに投げられました」と振り返る。5回を投げ、被安打2、奪三振5、無失点。試合後はヒーローインタビューに呼ばれ、場内のファンからの大歓声を浴びた。

「5回しか投げていないのに、二軍で投げるよりもずっと疲れました」

 上々のデビューを飾った松井だったが、すぐに壁にぶつかった。蓄積された疲労が抜けず、ボールから本来の球威が削がれていった。

「一軍にいるだけで気疲れしていました。キャンプからずっと二軍にいたので、周りはあまりしゃべったことがない人ばかりで。試合では緊張しますしね」

 6月4日の日本ハム戦では、高校時代のチームメイトである野村佑希と対戦した。

 松井は大学時代に、こんなことを語っていた。

「僕は『Bチームの星』になりたいんです。自分がプロに行くなんて、誰も想像がつかないと思います。凡人でもやればできると証明したいんです」

 高校2年秋に二軍格であるBチームに落ち、絶望を味わっている。悔しさをバネに努力し、3年春に結果を残してベンチ入りを果たした。そんな松井にとって、野村は「エースで4番」の大スター。プロで相対してみて、松井は「ほかの選手よりちょっと意識しちゃいました」と振り返る。

 その結果、野村に3ラン本塁打を許すなど、3回5失点でノックアウト。松井はすぐさま二軍に落とされた。

 次に野村と対戦したら、どんな勝負をしたいか。そう尋ねると、松井は即答した。

「インコースでバットをへし折るくらいの気持ちで投げたいですね」

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