篠塚和典が語る、クロマティが「4割バッター」に迫った1989年 「大好き」と語っていた投手とは? (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

――篠塚さんのバッティングを近くで見ていた影響もあったのでしょうか?

篠塚 同じような打球のコースではなく、90度のフィールドを広く使っていく意識を持てば打率も上がっていくんじゃないか、といったように、確実性を高めるためのバッティングの話をクロウ(クロマティ氏の愛称)としたこともありますから、僕から影響を受けた部分もあったと思います。そういう話をしてからは、ポンと合わせて逆方向へ運ぶバッティングも増えていきましたね。

――前かがみになり、お尻を突き出すような感じのクラウチングスタイルでのバッティングは技術的にどう見ていましたか? メジャー通算4256安打を記録したピート・ローズさんに憧れて始めた、と言われていますね。

篠塚 昔は、ああいう構えの外国人選手が多かったですよね。クラウチングスタイルの場合はバットを立てない。たぶん、肩でバットを担ぐような感覚だと思うので、バットは出しやすくて軌道もよくなるはず。ただ、前かがみの姿勢でボールに強い力を伝えるのは、体が強くないとできません。外国人選手の屈強な体があってこそのバッティングスタイルだと思います。

――打撃の調子が悪い時、同じ左バッターとしてアドバイスを求められることはありましたか?

篠塚 バッティングの話をすることはあまりなかったのですが、たまに「どういう意識でバッターボックスに入っているのか?」「どんなボールを狙っているのか?」などと聞かれることがあって、そんな時はアドバイスをしていました。

 それと彼は、僕も含めて他のバッターのバッティングをよく観察していましたよ。僕がバッティング練習をしている時にクロウが後ろで見ていたり、見たものを練習に取り入れて試したりと、研究熱心なタイプでしたね。自分のチームだけでなく、他チームのいいバッターも熱心に観察していたような気がします。それによってバッティングフォームが大きく変わるわけではないのですが、意識の持ち方が年々変わっていくのを感じていました。

――意識の持ち方というのは、来日当初の引っ張る意識から変わっていったということでしょうか。

篠塚 そうです。なんでもかんでも引っ張って長打を狙うわけではなく、「つなぐ意識」や、試合の状況に合わせたバッティングを心がけるようになりましたね。

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