「これはいよいよ逃げられん」WBC準決勝で牧原大成が明かす幻となった代打でバント「失敗したらパスポートを捨てなきゃ。日本には帰れん」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 編集協力●市川光治(光スタジオ)

「もちろん、行けるなら行きたいという気持ちはありました。それでも僕は、性格的に失敗した時のことを考えてしまうんです。もし自分が行ったとしたら、選ばれた理由は守備や走塁じゃないですか。もしエラーなんかしたらどうしようとか、牽制で刺されたらどうなるんだろうとか、そんなふうに考えたら普通にプレーできなくなるよなって、考えれば考えるだけネガティブなことしか浮かばない。やっぱり行かないほうがいいのかなって結論に傾きながら、翌朝、球場へ行ったんです。

 そうしたら(コーチの)斉藤和巳さんが来られて、『決まったか』って......『いやぁ、行かないほうがいいですかね』と言ったら、すかさず『バカか、そんな経験ないぞ』みたいに言われて、お尻を叩かれたんです。たぶん、あのままひとりで考えていたら、行かないという答えになっていたと思います。和巳さんにああやって言ってもらえて本当によかった......いい結果に転ぼうが、よくない結果だろうが、一生に一度しか味わえない経験だったということは間違いありませんからね」

 しかし、遅ればせながら日本代表に合流した牧原は、最初、チームメイトに対して気後れしてしまったのだという。

「歳で言えばわりと上のほうでしたけど、すごい選手ばっかりなんで、気安くしゃべりかけられないじゃないですか(笑)。チームに合流した直後の大阪で決起集会があったんですけど、その時、席をクジで決めたんです。そうしたら僕、ダルさん(ダルビッシュ有)の隣になった。『うわっ、マジか』と思いました。

 僕、ただでさえ人見知りなのに、初っ端からダルさんの隣なんて、どうしようと思っていたら、ダルさんからいろいろ話しかけてくれて......それも野球の話じゃなく、『お酒は何が好きなの』とか、いろいろ質問してくれたんです。そのおかげですごくしゃべりやすくて、お酒の質問にも『何でも好きです』とか、意味のないことを答えちゃっていましたね(笑)」

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