近鉄最後の優勝戦士、北川博敏と交代して代打逆転サヨナラ満塁ホームランを見届けた男の今 古久保健二は日本→韓国→台湾で指導者になった (2ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

 ふたつ返事で台湾行きを決めた古久保は、3シーズンバッテリーコーチとして富邦ガーディアンズのディフェンスの強化に貢献し、昨年からは、かつて日本で袖を通したクリムゾンレッドのユニフォーム、楽天モンキーズのヘッドコーチを務めている。

「韓国の時は、ソングンさんがコーチを探しておられて、一緒に仕事をしたことがある小林晋哉さん(元阪急)が間に入ってくれました。台湾の時は富邦の球団顧問である郭泰源さんや、台湾でコーチをしていた(楽天時代の同僚)立石充男さん(元南海など)を通じてすることになりました。みんなどこかでつながっているんですね。台湾からお話をいただいた時も、韓国野球を経験していたので抵抗はなかったです。要は、コミュニケーションだけだと思うんですよ。野球の技術を教えるというのは、どこに行ってもそんなに差はないと思います」

 まず選手の声を聞くというのが、古久保の指導者としてのモットーだ。台湾で話されている中国語には、そもそも敬語がない。そのためか、日本以上にタテの人間関係が強い韓国と違い、台湾人の人間関係は非常にフラットだと、古久保は言う。

「選手との距離感ですか? もう友だちですよ(笑)。僕は中国語を聞いてなんとなくわかる程度ですが、選手たちも多少は日本語をしゃべりますんで。いつも冗談を言い合っていますよ。そこは韓国とは違うところですね。韓国は監督が絶対ですから」

 試合中のベンチでは現役時代同様に鋭い眼差しをグラウンドに向け、選手たちを叱咤している古久保だが、ゲームを離れた姿はまさしく好々爺だった。

「まず教える。それも『こうしなさい』ではなく、選手とコミュニケーションをとりながら、どうすれば理解できるか探っていく。そういう姿勢で臨んでいます。やっぱり、人それぞれ体もポテンシャルも違うので。でも、それは台湾に来たからではなく、日本にいる時から心がけていたことです」

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