2017年夏の甲子園準優勝 広陵を支えた背番号18の主将が中村奨成に送るメッセージ「プロ野球が終わった時に周りに誰もいなくなるぞ」 (5ページ目)
【人生に意味のない経験はない】
岩本のラスト登板の様子を伝えると、明治神宮大会で敗退した直後にもかかわらず、中井監督は静かにほほ笑んだ。
「淳太は本当によく頑張りましたよね。何回手術したんじゃろ? あんなに気持ちのいい男はいませんよ」
岩本の座右の銘は「人生に意味のない経験はない」。これは恩師の中井監督からもらった言葉だ。岩本は言う。
「自分の手帳に大きく、この言葉を書いています。『ヒジを痛めて泣いたことも、苦労したことも、悲しかったことも、全部がおまえの人生の役に立つ』と中井先生に言っていただきました。落ち込んだ時、本当に励まされました」
故障と戦ってきた日々、もちろん後悔もある。
「後悔ですか、後悔は......たくさんあります。柔軟やストレッチをしっかりやっておけばよかったなあ、とか。中井先生にも谷口監督にも『体を柔らかくしろ』とさんざん言われていたんですけど。もっと柔軟をしとけば、変わってたかなあ(笑)。ケガをしたのはまぎれもなく私の身体の管理不足です。体の状態が悪いなかでも、『淳太を投げさせてください』と高校、大学、社会人の仲間が監督に言ってくれたのは、心からうれしかった」
さらに続ける。
「個人としての野球人生はもちろんケガばかりだったということもあり、苦しく、悔しい思い出が多いですね。しかし、ケガをしていなければ、恩師、仲間、経験、言葉、たくさんのことと出会うことができず、もちろん今の私はありません。一番は、ここまで野球を続けさせてくれた家族に感謝します。社会人として一人前になり、息絶える時に心から『いい人生だったな』と思えるように、一歩一歩精進いたします」
今後はJPアセット証券野球部のGM補佐という重責を担うことになる。岩本淳太、24歳。彼の野球人生はこれからだ。
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