2017年夏の甲子園準優勝 広陵を支えた背番号18の主将が中村奨成に送るメッセージ「プロ野球が終わった時に周りに誰もいなくなるぞ」 (2ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

 2017年に準優勝したチームは、1年間で3人もキャプテンが入れ替わった。はじめは外野手の佐藤勇治、そのあとが中村、3年春になって任されたのが岩本だった。岩本が言う。

「ある日、『淳太、今からおまえがキャプテンをやれ!』と中井先生に言われました。僕は中井先生に『奨成じゃないとダメです。奨成をキャプテンにしてください』と言ったのですが、聞き入れてもらえず、僕がキャプテンをすることになりました。自分ではキャプテンを支える立場ならチームの役に立てると思っていましたが、キャプテンなんてとてもとても......自分でつとまるのかという不安がありましたが、中井先生にそう言われたらやるしかない」

 中井監督は「ほかにろくなやつがおらんのじゃけ」と言いながら、すぐに指示を出した。

「これまで野球ができずに一番悔しい思いをしてきたのはおまえやろ? どういう思いで野球をしとるのか、全員に浸透させろ」

 キャプテン指名を受けた岩本はすぐに中村のところに向かった。

「監督室を出て、先に歩いている奨成の後ろ姿を見て言いました。『オレに技術がないのはわかっとるやろ? おまえが試合ではゲームキャプテンとして、技術でチームを引っ張ってくれ』と言いました。僕はチームをひとつにすることだけを考えるようにしました」

 岩本がみんなに徹底したのは、この3つのこと。

誰かのために
人を裏切るようなことはしない
まわりを笑顔に

「野球をすることで恩返しできれば最高ですよね。人を裏切るような人間にツキが巡ってくるはずがありません。誰かを喜ばせれば、自分もうれしくなるはずです」

 レギュラーと補欠のミーティングを続けた結果、「控え選手がいるからメンバーがある」という共通認識ができあがり、広陵は甲子園の決勝戦まで駒を進めることができたのだ。

【甲子園準優勝から6年後の決断】

 高校3年の秋にトミー・ジョン手術を行ない、大学入学後もリハビリに費やした岩本は、上武大学4年春にリーグ戦で初登板を果たした。しかし思うようなピッチングができず、そのあとの全日本選手権でのベンチ入りはならなかった。

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