大引啓次がプロ野球引退後大学院に進んだ理由「大事なのはどれだけ社会に貢献できるか」 (2ページ目)
【マイナーリーグで見つけた方向性】
── 大引さんは2020年1月、コーチとして学ぶためにアメリカに渡りました。
大引 テキサス・レンジャーズの指導に入れていただいて、感じるものがありました。アメリカの文化なのかわかりませんが、選手とコーチが対等なんですよ。お互いがお互いをリスペクトしていることに驚きました。とくにマイナーリーグのコーチは毎日の練習メニューを考えて、どうすれば選手がうまくなるのか、どうすれば飽きさせることなくトレーニングさせられるかを考えていました。レンジャーズでというよりも、将来メジャーのどこかのチームでプレーできるように指導しているように見えました。
── しかし、新型コロナウイルスの世界的な流行によって方向転換を迫られることに。
大引 コーチ留学は1カ月ほどで断念せざるをえませんでした。でも、アメリカに行ったことで、自分が目指す方向が見つかりました。その後、日本体育大学の伊藤雅充先生とお話する機会を得て、コーチング学を勉強させていただくことになりました。
── 伊藤教授は、選手が技能を伸ばすためには、自ら学ぼうとする意欲こそが重要だという「アスリートセンタード・コーチング」を提唱していますね。
大引 大学院に進んだことで、年齢がひと回り下の人たちや野球以外のスポーツをしてきた人と一緒に学ぶことができました。個人競技、団体競技の違いもありますし、記録を競うものも体をぶつけ合うコンタクトスポーツもあります。そういう垣根を越えて、さまざまなことについてディスカッションすることができる貴重な機会となりました。
── それと同時に、日本体育大学野球部の臨時コーチに就任されました。
大引 自分でも学びつつ、これまでのアマチュア、プロ野球での成功体験をもとに指導をしています。ただ、それがその選手にとって正解かどうかはわかりません。ずるい言い方になるかもしれないけど、「選択肢を出すけど、選ぶのは君だよ」と言っています。
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