斎藤佑樹が決死の覚悟でつかんだバースデー勝利「6月もダメなら野球人生が終わる」 (4ページ目)
まず、先頭の長野(久義)さんを3球三振に斬ってとります。真っすぐ2球で追い込んで、3球目、ボールゾーンへ曲がっていくスライダーで空振り三振。2番の鳥谷(敬)さんはバックドアのカットボールでセカンドゴロ。3番の(アレックス・)ラミレスも打ちとって(セカンドゴロ)、三者凡退です。
じつはあの日、僕はあることを胸に秘めてオールスターに臨んでいました。それは、大胆に、でも力を抜いて、ストレートをストライクゾーンへ投げよう、ということ......結果、(6番の)中村紀洋さんに初球、真っすぐを投げたら、レフト上段まで届く特大の2ランホームランを打たれてしまいました。
それでも次の打席、中村さんにはまたストレートで勝負を挑みます。とくにその初球、アウトローに決まった時のパチッとはまった感覚がすごくよかったんです。さらに前の打席でホームランを打たれた高めの真っすぐを投げて、今度はキャッチャーへのファウルフライに打ちとります。あの時、気づいたことがありました。
まだ圧倒的な力があるわけじゃなかった僕の真っすぐをストライクゾーンへ投げれば、打たれるリスクは高くなります。函館でもそうでしたし、オールスターの時もそうだった。でも、じゃあ、真っすぐをストライクゾーンに投げたら絶対に打たれるのかと言われたら、そんなはずはない。当たり前のことなんですけど、それをマウンドで実感できていなかったんです。
初球がボールになって、2球目もきわどいところを狙いすぎてストライクがとれない。初回からコーナーへきれいに変化球を決めようとすると、後半になって緩いボールが効かなくなってきます。もっとシンプルに、立ち上がりはどんどん真っすぐで攻めればよかったんですけど、それができなかった。何とかきっかけをつかみたいと思っていたところ、オールスターでの中村紀洋さんへのピッチングでつかんだ気がしていました。
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後半戦のスタート、斎藤はオールスターゲームと同じ京セラドームのマウンドへ上がった。バファローズを相手に斎藤が意識したのは、大胆さを意識しながらストライクゾーンへ投げ込むこと──しかしこの試合の結果が、斎藤の野球人生における重大なボタンのかけ違いを生むことになってしまう。
次回へ続く
著者プロフィール
石田雄太 (いしだゆうた)
1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。
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