NHKからBCリーグ監督、そして西武へ 伊藤悠一の信念は「あえて見えない世界に飛び込むことで自分の人生が豊かになる」 (3ページ目)
NHKという多くの人が羨むような職場を離れ、独立リーグというアンダーグラウンドの世界に飛び込んだことで伊藤監督の人生は大きく変わった。
「NHKから茨城に来ていなかったら、西武ライオンズへという話もなかったです。自分自身、NHKの仕事はやり切ったと思ったので野球界に来ました。自分のなかではリスクを負った挑戦であり、リスクを負えばそれだけ覚悟も増えると思います。そういったなかで1年をすごして西武からお話をいただけたのはすごくありがたいなと思うと同時に、ずっとその場所で安泰しないことが大事だとあらためて感じました」
では、家族はどんな反応だったのだろうか。新たな子どもを出産したばかりの妻に2年連続の転職を伝えると、「NHKからアストロプラネッツに行くのが相当な驚きだったので、今回はそれほど驚かれなかったです(笑)」。
待遇面は、西武での給料はアストロプラネッツ時代から2倍以上にアップ。NHK時代より「少し低い」が、成果を出せば上がっていくだろう。
もっとも、人が働く上で報酬は大事な要素だが、その額は決してすべてではない。さらに言えば、異なる業界に転職すれば一時的に下がることもあるだろう。それでもキャリアを長い視点で見た場合、新たなスキルや経験を身につけることで将来のリターンになっていく可能性は十分にある。
【根底にあるディレクター魂】
伊藤監督自身、思いきった挑戦をしたから想定外のキャリアをたどることになり、一歩踏み出す大切さを再認識している。
「NHKにいれば、ある程度転職の世界で強いんですよね。将来、40代ではこういう働き方をして、50代では......と進路が想定できるのはもちろんありました。ただ、ディレクターとしてドキュメンタリーをつくっていたこともあり、先が見えるものって最終的な満足値はそんなに高くないと思っています。アスリートの取材をしているなかでも、最後にこの試合があって、こういう結果になって、こういう結末を迎える......とイメージできてしまうと、じつはそんなに面白くないんですよね」
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