井端弘和が語る熾烈なセパのCS争い「短期決戦ならいい戦いができる」「一気に引き離す可能性もある」チームは? (3ページ目)
【パ・リーグで「一番勢いがある」のは?】
――続いてパ・リーグですが、ロッテとの直接対決で連勝し、単独2位に浮上したソフトバンクのここまでの戦いはいかがですか?
「ロッテが落ちてきて、結果的に2位に浮上した形ですね。打線は軸がしっかりしていますし、本来であればもう少し貯金があってもいいチームだと思うのですが、投打のバランスがよくない印象です」
――確かにチームでの得点はリーグトップの510点ですが、それがうまく勝ちに結びついていないのでしょうか。
「打線と投手陣の調子の波が合わないこともあるでしょうが、特に投手陣の苦戦が目立ちますね。
先発陣は、千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)という柱が抜けた部分をなかなか埋められなかった。ひと昔前のソフトバンクは、千賀の後に石川柊太や東浜巨といった力のある先発投手が何人も控えていて、今のオリックスに引けを取らないほど強力でした。シーズン中に大崩れすることもありませんでしたが、今シーズンは10勝以上している投手がいませんから。
中継ぎ陣が打たれて逆転されるケースも見られました。(リバン・)モイネロの離脱が大きいですが、それでも代わりの投手が出てくるのがソフトバンクという印象でしたけど......地力はあるチームだと思うので、最後にそれが噛み合うかどうかですね」
――7月中旬から2位をキープしていたロッテは、楽天とゲーム差なし、勝率差で4位となりました。
「ここまで今の位置を維持できたのは投手力によるものでしょう。特にシーズン前半は佐々木朗希をはじめとした先発陣の頑張りがあり、中継ぎ陣も安定していた。極力失点を押さえながら、打線が点を重ねていく。足を絡めながら、ジリジリと点を取る野球がチームに浸透していますね。相手チームからすると、リードしても大きく引き離すことが難しいので、かなり嫌だったでしょう」
――ただ、佐々木投手が左わき腹肉離れで一軍登録を抹消されて以降は少しずつ貯金を減らし、ここ数日も特例2023で登録抹消される選手が相次ぐなど苦しいですね。
「佐々木が長く離脱した中でよく耐えてきた、というところでしょうか。9月は連敗もあって厳しいですが、ここ数試合で先発の美馬学の状態がようやく上がってきた。種市篤暉も1カ月以上勝ちがついていませんが、もうひと踏ん張りできるかですね」
――徐々に上位との差を詰め、3位まで上がってきた楽天の印象は?
「一番勢いがあり、野手、ベンチも一丸になっている雰囲気があります。長く調子が上がらなかったベテランの島内宏明や、中日から移籍の阿部寿樹が打ち出してきたことが大きい。小郷裕哉、村林一輝といった今シーズンにブレイクした選手たちもさらに乗っていくと、ここから一気に引き離す可能性もあると思いますよ」
【プロフィール】
井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ、神奈川県出身。堀越高から亜細亜大を経て、1997年ドラフト5位で中日に入団。2013年には日本代表としてWBC第3回大会で活躍した。2014年に巨人に移籍し、2015年限りで現役引退。現役生活18年で1896試合出場、1912安打、56本塁打、510打点、149盗塁。ベストナイン5度、ゴールデングラブ賞7度、2013年WBCベストナインなど多くのタイトルを受賞した。2016年から巨人内野守備コーチとなり、2018年まで在籍。侍ジャパンでも内野守備コーチを務め、強化本部編成戦略担当を兼務している。
著者プロフィール
寺崎江月 (てらさき・えげつ)
丙午(ひのえうま/1966年)生まれ。TBSの派遣AD、企業の営業を経て、2008年の『西岡剛7』(三修社)からNPB専門の野球ジャーナリストとして活動をスタート。『PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?』(ぴあ)、2012年に巨人・長野久義から始まった廣済堂出版のメッセージBOOKシリーズ全18作品の企画プロデュースを担当。そのほか、現中日ドラゴンズ立浪和義監督『攻撃的守備の極意』など"極意シリーズ"、『アライバの鉄則』といった名選手たちのマスターズメゾットも担当する。
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