「メンバーを見てレベルが高すぎる!」と驚愕 拓大紅陵高→プリンスホテル入りした元オリックスの小川博文は「なんてところに入ったんだ」 (3ページ目)
悩んでいる時、二度、三度と学校に足を運んでいたのが石山だった。初めて面談した時、小川を二塁で起用することを前提に、遊撃をはじめほかのポジションに就く選手の名前を挙げた。「すごいメンバーが来るんだな......」と思った小川は、例によって石山の球歴も知らずに「お世話になります」と言っていた。プリンスホテルの名も、野球部のレベルも知らないまま入社試験を受けた。
「学生服を着て、原宿の国土計画のビルまで行って。同じ高校出が6人一緒だったんで、先輩も同い年ぐらいかと思ったんですけど、入ってみたら何か雰囲気が違う。先輩方、ごっつい人ばっかりで。聞くと、プロにドラフト指名されてもおかしくない大学のスターやプロに行かずにプリンスに入ったという方がいて、オレは何ていうところに入ったんだと」
【4年後のソウル五輪を目指せ】
小川が入った85年のプリンスは、1期生で「大学球界のスター」と言われた内野手の居郷肇(法政大/元西武球団社長)、中屋恵久男(早稲田大)が在籍。サブマリン右腕の吉田幸夫(青山学院大)も、前年のロサンゼルス五輪で活躍していたから小川を驚かせた。さらに他社から移籍した両ベテラン、投手の鈴木政明(勝山高)、外野手の中本龍児(近畿大)は想像を絶していた。
「鈴木さんはカープで活躍された山根(和夫)さんのお兄さんで、20年連続都市対抗出場ってすごすぎます。あと、中本さんが何かと怖い方で......。怖いと言えば、野球部専用バスの専属運転手のおじいちゃんが厳しくて。休みの日に『高卒6人、集合せえ!』って言われて行ったら『バスを掃除せい』と。掃除は新人の仕事ということなんでしょうけど、高校出だけなんです」
合宿所での休日の電話当番も高校出は3年間、大学出は1年間という決まりもあった。球歴による微妙な違いも感じつつ、2月の鹿児島・奄美大島キャンプを経て、帰って来て、小川はまた驚くことになる。
「はっきり言って、僕は田舎者でしたから。西武ライオンズの室内練習場を借りていると聞いていたのに、ユニフォームを着てる人を見て、『あれ、プロ野球選手?』って興奮したり。『何なんだ、ここは......?』となることが多かったですね」
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