斎藤佑樹が悔やむプロ1年目のつまらない葛藤「自分はすべてにおいて中途半端だった」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 僕は3勝目を挙げて、初めてのオールスターゲームに出場することになります。名古屋での第1戦では1回3分の1、仙台での第3戦では1回を、いずれもリリーフで登板してゼロに抑えました。後半戦へ向けて、いい流れができたと思いました。

 そもそもプロ1年目の前半戦、僕のストレートは144〜145キロが出ていて、ツーシームも思うように操れて、スライダーはいつでもストライクがとれる自信があって......いま思えばそれで十分、プロで戦えるピッチングができていたと思うんです。吉井さんも「フォーシームはアウトコースなら高さは気にせんでいい、変化球は低めならコースはアバウトでいい」みたいな感じでしたし、そういうピッチングはやろうと思えばできたはずです。

 たしかにストレートでもスライダーでも初球からバンバン、ストライクゾーンへ投げ込まれたらバッターは絶対にイヤですからね。でも、そこに気づけなかった......もし、今のようなデータが当時もあったら、バッターが初球から振ってくるケースは意外に少ないとか、自分の感覚と実際のズレに気づけたと思うんです。

 あの頃の僕は、初球、簡単にストライクをとりにいったら間違いなく打たれると思い込んでいて、やたらと慎重になっていた。初球がストライクになるのと、初球が外れてワンボールになるのとでは、その後の配球がまったく変わってきます。

 僕は初球から真っすぐはコーナーいっぱい、ギチギチに投げようとしていましたし、変化球は低めいっぱいを狙っていました。それが外れて、次はもっと際どいところを狙っていた。自分で自分のピッチングを苦しくしていたんです。データによって野球が変わる......というか、野球を変えてくれるデータがあるということを知ったのは、僕が引退する2〜3年前のことです。このバッターはこの球種の初球は振ってこないとか、このバッターは振ってきてもけっこう打ち損じるという細かいデータが当時もあれば、投げるうえでの安心材料になったのにな、という思いはあります。

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